盛岡タイムス Web News 2012年4月 12日 (木)

       

■ 〈おとうさん、絵本です〉380 岩橋淳 手ぶくろを買いに

     
   
     
  新美南吉という作家は、その出自こそ違え、教員経験があり、われらが賢治との共通点が…、とここまで書いて、ハタと気づきました。この作品、339回でご紹介済みでした(汗)。ただし、そう、幾人もの画家によって世に問われている本作のこと、ここは居直りでもなんでもなく(?)もっとも手に取られている黒井版で参ります。

  多くのイラストや絵本の作画で独自の地位を築いている黒井さんの画風は、とにかくソフト。そして、写真撮影さながら、天上の一点からライティングされているかのような色鉛筆による繊細な色調が、黒井調、とも言うべき効果を上げています。

  ところで、本版における「雪の粉(こ)」「絹絲(きぬいと)」「牡丹色」「仰有(おっしゃ)った」等々、昭和前期の童話ならではの言葉遣い・文字遣いですが、これは賢治童話などに慣れ親しんだ方々にはともかく、現代の多くのこどもたちや親の世代にとって、決してなじみの語句ではないこと、論をまちません。しかし、日本語の豊かさに親しみ、楽しむには、あえて幼い頃からの読み聞かせで接しておくことをお薦めしたいところ。かつて西欧童話にも名文あり、深みや味わいはありましたが、翻訳の改訂でその面影が失われつつあることを思えば、国産童話の存在が、貴重なものであるとも言えるのでは? 願わくは版元各位には、くれぐれも「意訳」など考えることのありませんように。

  【今週の絵本】 『手ぶくろを買いに』新美南吉/作、黒井 健/絵、偕成社/刊 1470円(1998年)


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