盛岡タイムス Web News 2012年4月 13日 (金)

       

■ 〈潮風宅配便〉94 草野悟 たくましく復活・山田の釜揚屋

     
   
     
  人に良いと書いて「食」と言ったのは、東京の有名料理人・わけとく山の野崎さんです。人に良い、=うまい、私の哲学は「よだれが出るほどうまい」のが「食」でありまして、思い出してよだれが出るほどの物は、超一級品となります。まずいものは「食」とは言わないんですね。

  先日、山田の友人シェフ川村さんが、仮設店舗で「釜揚屋」を復活しまして、早速その味を確かめに伺いました。震災前の、あのアツアツの天ぷらが乗った、かめばかむほど美味汁が流れ落ちるうどんがまた食べられると、前夜はよだれが喉に引っかかって目が覚めたほどです。

  陸前山田駅は、当然跡形もなく、火災で真っ黒になった樹木がシンボルのように残っているすぐそばに、中小企業基盤機構の建てた仮設店舗があります。のれんに「釜揚屋」とありました。会話もそこそこに早速注文したのが「天ぷらうどん 650円」です。この店の最高峰に位置する価格です。大きな海老天とちくわ、シイタケ、ピーマンの揚げたてがでーんと乗っかって登場です。その横に、緑がまぶしい採れたての「マツモ」がびっしりと固まっています。
     
   
     

  涙が出ました。復活を喜ぶ涙ではなく、人に良いを実践した、釜揚屋のうどんが目の前にあるからです。汁はどこまでも山田湾のように澄み、うどんが「早く食べろ」と催促します。ハフハフと言いながら天ぷらに感動し、マツモの歯ごたえを楽しみ、寡黙、沈黙、黙々とひたすら食べ続けました。実に見事な復活です。

  川村さん、店はすべて流されました。その間、我々と「岩手食産業応援プロジェクト」に参加していただき、沿岸の食の復興に尽力いただきました。次は自分の番ですね。家々の破壊された基礎土台だけが広がる山田の町並み、プレハブ小屋が目立ってきました。

  春はもうすぐですが、本当の春を皆で喜びあう日まで、おいしいうどんをお願いいたします。
  (岩手県中核観光コーディネーター)


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