盛岡タイムス Web News 2012年4月 14日 (土)

       

■ 〈舗石の足音〉399 藤村孝一 ミーハー的選曲とプロの選曲

 雑誌「音楽の友」を長い期間購読している。クラシック音楽の情報・資料を与えてくれるありがたい雑誌だが、時々気に入らない企画・特集がある。

  最近では、昨年8月号の「特集 私の好きなショパン、この1曲!」であった。読者に1人5曲ずつ挙げてもらい、多い順に「1位から20位まで並べたもの」である。また、32人の日本のピアニストにも5曲ずつ挙げてもらい、短く述べてもらっている。

  Jポップの番組では、毎週順位を付けて、上がり下がりを表示している。だが、あれは長さがほぼ同じで、歌詞の付いた歌の曲だからできることだ。

  ショパンの曲は大抵ピアノ曲だが、「長さ」が曲によって大きく異なる。30分の曲や多くの楽章のある曲と、3分程度の曲を同じ1曲とするのはいかがなものだろうか。

  また、「好き」ということはそれぞれで構わないが、アンケートに答えた読者皆が同様に「ショパンの曲をほとんど」聴いているのか。限られた有名な曲のみ聞いて「好き」な曲と答えた人はいないだろうか。非常に曖昧である。

  1位から20位までのうち10位までの曲名を次に挙げてみよう。
  1 ピアノ協奏曲第1番
  2 舟歌
  3 幻想即興曲
  4 練習曲第3番「別れの曲」op   10―3
  5 ポロネーズ第6番「英雄」
  6 バラード第4番
  7 ノクターン第2番 op9―2
  8 バラード第4番
  9 ピアノソナタ第3番
  10 前奏曲第15番「雨だれ」
   …以下省略

  それぞれについて少し述べたい。

  1.もう1曲の協奏曲第2番も負けず劣らず美しいのに、なぜか20位までに入っていない。2.35歳の時の傑作。32人のプロのピアニストの中で13人が選んでいる。3.ミーハー的。プロは1人も選んでいないし、ショパン自身も出版しなかった。死後に出版された。友人フォンタナの功罪半ば。他の3曲の即興曲も美しい。4.21歳までの傑作。練習曲の他の曲も聴く必要がある。5.7歳から書き始めたポロネーズの頂点。3番7番も傑作。1、2、4、5番もいい。ただ、限りなく暗い。6.技巧も音楽性も優れている。7.これは、同じメロディーの繰り返しで作品としては良くない。むしろ1番の方が優れている。選んだ人はミーハー的。全部で21曲(22曲?)あるノクターンはどれも個性があり、美しく繊細。8.ショパンの最高傑作ともいわれる。円熟期の作品。9.充実したソナタ。34歳円熟期の傑作。第2番のソナタも負けず劣らず傑作。10.太田製薬がコマーシャルで使っている第7番も含めて他の23曲、別の2曲の前奏曲も聴いてみる必要がある。

  選曲の仕方を見ると、ごく素人的ミーハー的な選び方とプロのピアニストのような選び方が混じっている。不思議なことに、マズルカ(50数曲)が1曲も入っていない。さすが、ピアニストは12人がマズルカを挙げている。

  こういうランキング(順位付け)は上位が「優れた曲」であるかのような「錯覚」を読者に抱かせかねない。


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