盛岡タイムス Web News 2012年4月 24日 (火)

       

■ 〈大連通信〉5 南部駒蔵 換金

 外国にいて、一人で銀行に行って換金するのは不安なものである。私は35万円を中国の人民元(RMPという)に換金したかった。旅先で大金をごまかされたり、途中で奪われたりしては生きていけない。李さんに電話して、手伝ってくれないかと言うと、早速、私の暮らす寮まで来てくれた。

  交通大学から歩いて15分くらいのところに中国銀行があるのでそこを利用することにした。中国では銀行は土曜日も営業していると聞いたので、それを信じて出かけた。なるほど営業していた。中に入ると銀行の警備をしている男が李さんと話し始めた。その警備の男の紹介で李さんは別な男と話し始めた。間もなく、李さんは私の手帳に
「1万円=744・9元

  1万円=755元

  と書いて示した。銀行を通して換金すると、744・9元だが、この男を通して換金すると755元になるという。李さんはさらに「最初、750元、と男がいうので、755元でどうかと聞きました。男は電話して聞いてみるということです」という。男は携帯電話でどこやらへ電話している。男は一人で商売?しているのでなく、組織になっているらしい。

  間もなく戻ってきた。「大丈夫だ、できる」と言っています、と李さんは言う。私は男に35万円を渡し、男から2万6425元を受け取って換金は無事終わった。

  男は自分の預金口座から引きおろした金を私に渡して寄こしたから銀行の金である。贋金(にせがね)の心配はない。男は円をためて日本に留学する学生の換金に使うのだと李さんは言う。銀行より安く円を買えるから留学生も得をする。

  中国で日本人は両替するのに銀行に行っても銀行の窓口を使わず、こうした男に頼むのが普通になっている。

  李さんに言わせると法律的には問題で政府は禁じていると言う。しかし、銀行も承知して、警備員がその男を紹介しているから商売の協力をしていることになる。なにしろ銀行の中にこうした男を置いているのだから認めているのは明らかである。銀行は換金などわずらわしく、商売にならないから自分の仕事をやってもらっているのだろう、とある日本人が言った。

  この商売(?)で誰も損をする人はないように見える。それにしても銀行に怪しげな?男がいるのは不思議な光景である。だれか経済に明るい人にこのからくりを説明してほしいものである。

  一日本人としては、驚きもし、ただ不思議に思うのである。

  銀行に 日本円欲しき男あり イソギンチャクのヤドカリに似て

  (元岩手医大教授)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします