盛岡タイムス Web News 2012年4月 26日 (木)

       

■ 〈おとうさん、絵本です〉381 岩橋淳 「ほろづき 月になった大きいおばあちゃん」

     
   
     
  青森県に生まれ、イラストレーターとして活躍する一方で絵本も手がけ、高い評価を受けた作者(1959〜2010)。その作品リストの中に、故郷を描いた佳作があります。

  遠い町から夏休みを過ごすため、おじいちゃん・おばあちゃんのもとにやって来た少年・ユキ。都会っ子にとってみれば、海に面した北の町(青森市の遠景に酷似)のたたずまいは小さな箱庭のようにも映り、ひと夏への期待の高まりが伝わってきます。ただし、本番は、この先。「山が海におっこちそう」な集落に住む、「大きいおばあちゃん」(ひいおばあちゃん)を尋ねるのが、二段構えの楽しみです。夏の日射しに包まれた、鄙(ひな)びた漁村の風景。そしてそこにひとり住む大きいおばあちゃんは、毎年、変わらずに少年を迎えてくれます。そこには、何十年、変わらずに積み重ねられた暮らしがあります。

  海に遊び、じゃがいも掘りに時を忘れ、通訳つきの昔語りに聞き入る日々。短い夏は、あっという間に過ぎて、少年は、大きいおばあちゃんに来年を約して、村を後にします。

  約束むなしく、翌春、大きいおばあちゃんは天にのぼっていきます。葬儀の夜、少年は、天上の月に、その面影を見るのでした。明けて、夏の日射しに比べて幾分やわらかい春の陽光に見送られ、町へと戻る少年の胸に去来するものは。

  読後、温かいものが静かに染み入る一冊です。

  【今週の絵本】『ほろづき 月になった大きいおばあちゃん』沢田としき/作・絵、岩崎書店/刊、1365円(2001年)


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