盛岡タイムス Web News 2012年4月 26日 (木)

       

■ 〈口ずさむとき〉278 伊藤幸子 歌の力

 天と地に呼び交はしたる合唱(コーラス)の高まる時しいのち耀(て)り合ふ
                                              太田眞紗子
 
  「2009年版現代万葉集」より。

  4月15日、山田町中央公民館にて「いざ起て!岩手人」コンサートが催された。六本木男声合唱団倶楽部(三枝成彰団長)主催、山田町、盛岡メンネルコール(木村悌郎会長)、松園シルバーダックス(達増崔夫会長)の共催によるもので、山田町出身の「六男」団員の波岡實さんとのご縁と伺った。

  雲ひとつない青空を映して、海は平和に凪(な)いでいる。午前11時ごろ会場に到着。昼食後すぐステージ衣裳に着がえ。黒スーツに蝶ネクタイの40人の団員の皆さん勢ぞろい、壮観だ。リハーサルが始まった。本日のプログラムは「希望の島」「遥かな友に」「婆やのお家」「般若心経」の四曲。木村先生の指揮で発声。本番さながらの緊張感がみなぎり、今回初の試みといわれる「般若心経」では、指揮者の合掌と団員の所作まで細かく確認事項がある。「メンネルコール」は平均年齢80歳といわれるが「歩く時は背筋をのばして」と言われ皆さん大笑い。

  さて午後1時20分開演、700席満員の熱気。スペシャルゲスト露木茂さんのごあいさつで始まり、そのあと沼崎喜一山田町長が「まさか露木さんの司会でここに立てるなんて」と笑わせた。1999年に結成された通称「六男(ロクダン)」は日本のプロ、アマ男声合唱団の中で最も活発な活動を続けている一つ。芸能界や政財界の著名人が多いことでも有名で、今回は辰巳琢郎さんもテノールを担当されている。現会員は230人、今回は69人が山田町のステージに立たれた。

  全員あざやかなグリーンのネクタイで整然と、若い指揮者初谷敬史さんを注視する。「兵士の合唱」の迫力。「希望海」は2001年のえひめ丸の海難事故をテーマに「帰れ帰れ九人の命」と歌う切なさが被災の海に重なった。「まだ/夢の向こうに行くには早すぎる/ぼくは祈っていたんだよ」の「天涯」には胸がつまった。「なぜ地球は丸いか/死んでいる別れた人どうしが/またどこかで出会えるように/神様が地球を丸くしたんだよ」こんなにじかに「祈っていたんだよ」と伝える歌の力のすばらしさ。

  そして六男、岩手の合同合唱「いざ起て戦人(いくさびと)よ」の大ステージ。深く豊かで荘厳に満ちた奏楽。壇上の110人の思いが熱い周波となって客席を打つ。生あれば、生きてさえいれば、こんないい日にも会える。フィナーレは永遠の「ふるさと」。平均年齢百歳までも、生涯現役で歌の力を愛し信じたいと思うことである。
  (八幡平市、歌人)

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