盛岡タイムス Web News 2012年4月 28日 (土)

       

■ 〈舗石の足音〉401 藤村孝一 天才少年の引くショパンの調べ

 日本のクラシック・ピアノ界に現れた天才少年をご存知だろうか。

  わたしも3月19日まで知らなかった。この日、講読している雑誌を受け取りに楽器店に行った。カウンターに置かれた「CHOPIN」を見ると、表紙にはピアノの前に座る「かわいい10歳ぐらいの男の子」が写っていた。店員さんに聞くと、「天才少年と言われる人です」という答えが返ってきた。

  家に帰って記事を読んだ。牛田智大(うしだ・ともひろ)さん12歳である。2月初めに「第15回浜松国際アカデミー」が開かれ、最終日に受講生たちがレッスンの成果を発表する「アカデミー・コンクール」が持たれたという。これには世界各国から選ばれた23名(他のコンクールでの上位入賞者も含まれる)が参加した。コンクールの結果、イタリアのラナ・ベアトリスさんと共に彼が1位に輝いたという。

  牛田さんは2歳からピアノを始め、8歳から出場した「ショパン国際ピアノコンクールinASIA」の各部門で5年連続第1位を受賞しているという。また、大ピアニスト中村紘子さんも100年に1度現れるか現れないかというレベルの、類稀なる才能の持ち主です」と激賞している。

  だが、音楽は聴いてみないとどの程度か分からない。「愛の夢〜牛田智大デビュー」というCDの広告が載っていたので、販売店に行ってみた。もう、「牛田智大コーナー」が設けられていたがそこにCDは1枚もなかった。取り寄せてもらうことにした。3月26日。

  3月30日夜、販売店から入荷の電話があり、翌31日受け取りに行った。

  CDは「『愛の夢』第3番(リスト)」に始まり「エリーゼのために(ベートーベン)」まで小曲を15曲を入れたものであった。

  「愛の夢」は技巧重視のリストの曲の中で数少ないメロディーの甘く美しい曲である。智大さんの演奏を聴いてこの曲の美しさを認識した。柔らかく純粋な音で歌っている。技術の勝った部分でさえ音楽的に聞こえる。

  他にプーランク、シューベルト、ヒステラ、グルック、任光(編曲 王建中)などの曲があったが、ショパンの曲に注意して聴いた。「夜想曲第2変ホ長調」「子犬のワルツ」「ワルツ第10番ロ短調」「ワルツ第4番ヘ長調」であった。「子犬のワルツ」を弾く12歳は全国で数多いだろうが、これほど美しい音で歌わせて弾く人が何人いるだろう。案外難しいのは「夜想曲第2番」「ワルツ第10番」である。非常に感傷的で、ともすると嫌らしくなる。それを彼は清潔に一つ一つ音を変え、微かなルバート(速さを緩める)を用いたりした。彼はこの夜想曲の演奏で「最初はテンポを落としていたため納得いく仕上がりにならなかったが、大好きなアシュケナージのCDを聴き直し、もう少しアップテンポに(速く)したほうがいいと判断し、よい結果を生んだ」という。成人ピアニストのように表現を考えている。驚いた。

  わたしは日本人のピアニストの弾くショパンをあまり聴かない。指はよく動くのだが何かが足りないのだ。

  しかし、今後牛田智大さんがショパンの他の曲を多く弾いてCDを出してくれたら、何度も聴きたいと思う。

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