盛岡タイムス Web News 2012年 5月 1日 (火)

       

■ 住民主導で避難路整備 みどりと自然育む会が大槌町桜木町自治会を支援

     
  4月28日に開かれたワークショップ。昨年3月11日の避難行動を検証し、安全な避難路を考えた  
 
4月28日に開かれたワークショップ。昨年3月11日の避難行動を検証し、安全な避難路を考えた
 
  東日本大震災津波で約400世帯のほとんどが浸水した大槌町の桜木町自治会(横山秀雄会長)で、盛岡市のNPO法人みどりと自然を育む会(武藤喜治代表理事)の支援による住民主導の避難路づくりが始まった。NPOなど住民団体と行政による協働事業を支援する県の「新しい公共の場づくりのためのモデル事業」の一環。NPOと住民が避難路の計画図を策定し、これをもとに町が事業の実現を図る。土木工事を伴う避難路整備に踏み込んで、「新しい公共|」を導入するのは県内で初のケース。住民の防災意識を高めると同時に、町だけでは手が回りにくい細かな復興事業を後押しする狙いがある。(馬場恵)

  「高齢者が多い。避難路は階段だけでなくスロープが必要だ」「一時的に集まる場所には明かりもあればいい」「車での避難も考えなければいけない」|。4月28日、桜木町保健福祉会館で、避難路整備に向けた初のワークショップが開かれた。住民約30人が参加。5班に分かれて地図を囲み、震災津波当時の避難状況や避難経路の課題などについて意見を交わした。

  NPOのメンバーが各班の司会を務め、住民が気兼ねなく平等に意見を出し合えるようリード。参加者からは高齢者に配慮した避難路整備や山火事も想定したルートの設定など体験に基づいた、さまざまな意見が出た。

  吉崎金弘さん(69)は「避難路整備は長年の課題。みんなの意見が聞けて有意義だった」。横山会長(63)も「しっかり目に見える形で事業が進めば、住民も安心できると思う」と期待した。

  昭和40年代に住宅開発が進んだ桜木町は、大槌湾に注ぐ小鎚川と城山の急斜面に挟まれたくぼ地に位置する。これまでは、川の氾濫による水害は想定しても、津波被害はほとんど心配していなかったという。しかし、今回は、小鎚川をさかのぼった波と町中心部から流れ込んだ波で409世帯中、389世帯が浸水。1階のほとんどが浸水した家もあり、被害が大きかった53棟は既に解体された。

  避難後、戻らない世帯もあるため現在は288世帯。高齢化も進み、一度、浸水した地域で、いかに安全な暮らしを確保するかは住民の大きな関心事だ。

  花壇造りなど復興支援活動で縁の生まれた同NPOが地域の事情を聞き「新しい公共−」に応募。700万円の事業費が認められた。今後、コンサルタントが用地測量やワークショップの結果をもとに避難路を設計し、計画書の原案を策定。再び住民の意見を聞いた上で計画書を仕上げ、早ければ9月にも町へ提出する。住民には新たな防災マップ作りにも取り組んでもらい、防災意識の向上を図っていく。

  武藤代表理事は「すべて行政に任せるのではなく、自分たちの地域は自分たちで守っていくという意識が大事。住民協働で行政負担やコストが軽減される効果もあるが、住民自身が成長する効果の方が大きい」と力を込める。

  同町は住民の計画書をもとに避難路整備を進める考え。しかし、実現には民有地の山林を切り開く必要があり、その裏付けとなる予算の獲得はこれからだ。安全な避難路の実現は住民と町、双方の熱意にかかっている。

  同町総務部総務課の森昌弘危機管理監は「人手も金も足りないのは事実だが、何とか工夫したい。住民が自分たちのこととして参加してこそ、避難路も防災マップも血が通ったものとなり防災効果も上がる。モデルケースとして、こうした取り組みが徐々に広がってほしい」と話す。


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