盛岡タイムス Web News 2012年 5月 8日 (火)

       

■ 〈幸遊記〉70 照井顕 鷺悦太郎の油彩画「アリア」

 長い歴史を持つ美術の公募団体「白日会」に3年連続出品し「一般入選」「一般佳作賞」そして今年、2012年の第88回展において、油彩F100号の「アリア」で遂に「白日賞」そのものを手にした陸前高田の画家・鷺悦太郎さん(53)。

  彼は昨年の3・11東日本大震災の大津波で、住まいもアトリエも200を超える作品も失ってしまったが、受賞作は、津波後に高田松原に立つ女性を描いたもの。今は仮設住宅に住みながら、それこそ仮設のアトリエも設けて、創作活動。さらには9カ所の絵画教室も復活させ後進の指導にも当たっている様子。

  小学生の時、絵画コンクール入選。以来、高田高校時代の日洋展入賞。岩手大学特設美術科時代には一般公募展にて史上最年少入賞。新制作展ではいきなりの賞候補に登場するなどで、「絵画の神童」と呼ばれた男だった。が、ある時パタリと出展をやめてしまった。昔は描きたい「物」にこだわり、その後には、モチーフとバックの「関係」にこだわって描き続けていた。

  僕も彼の絵が大好きで、若い時に描いた魔法瓶と炭火入れの絵(F80号)を10年以上も店に飾らしてもらった。実にいい絵だった。地元のバンマスで、シンガーソングライターの平岡睦男さんのLPレコード・ジャケットに瓶が歌っている様な不思議な絵を使わせてもらい、ジョニーの本の表紙絵、挿絵も描いてもらった。

  1998〜99年ころ、何カ月もの間、僕の店が終った深夜から未明にかけて、酒を飲みながら二人でセッセと絵手紙(はがき)をかいた。彼、鷺さんが絵を担当、僕が、その文を担当するという遊び、あれは実に、楽しい日々だった。気が付いたらそれは200枚を超えていた。その展示会は、ギャラリーや博物館、郵便局や温泉、しまいには盛岡市立図書館まで、1999年から2000年にかけて何度もの巡回展へと発展し大好評だった。絵も書もお互い「上手に書かないことが約束」だったからか、見る人たちの笑いが絶えないほど、ばか受けした。

  彼の絵は、表面的な表し方ではなく、その物の存在感や質感を優先させる描き方。そしてそれを、空間の中にどう置くかということにこだわっていた。最近は生命あるもの、いわゆる生き続けているものの、内面性とその魂までも伝える描き方。見る側にも、その物語が始まる。
(開運橋のジョニー店主)

 

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