盛岡タイムス Web News 2012年 5月 8日 (火)

       

■ 〈詩人のポスト〉 春 蟹沢小陽子

黒雲は雨を留めて
満開の桜が散るのを見届けている
番傘は紅い
肩口で柄をくるくると回す黒仕立て
花弁がはらはらと散るのを
弾くこともなく番傘は
自身を桜にしようというのか
むせ返るほどの温い空気に
春雨の温もりと湿度がせつない
 
雨がやんだら
急に大きな風が吹き抜ける
酸素、窒素、その粒子に
まんべんなく触れられ揺らされ
通り抜けられていく
花弁が舞い上がり渦になる
届かない雲と番傘は光る
ふり払われた花弁は再び
はらはら舞って宙へ戻った
 
通り雨が造っていった
花の道を行く

 

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