盛岡タイムス Web News 2012年 5月 10日 (木)

       

■ 「在宅医療」高まる需要への対応は 多職種連携「チームもりおか」

     
  4月25日に開かれた「チームもりおか」の在宅ケアワーキング委員会  
  4月25日に開かれた「チームもりおか」の在宅ケアワーキング委員会  

 在宅で訪問診療や生活の介助を受けながら、療養生活を送る「在宅医療」の需要が急速に高まっている。住み慣れた地域や家庭で自然な最期を「迎えたい」、「迎えさせたい」と前向きに在宅医療を選択をする人がいる一方、高齢者施設や病院に受け入れてもらえず、やむなく在宅医療に移行する人も。誰にとっても身近な問題だが、市民の認知度はまだ高くない。(馬場恵)

 こうした中、盛岡地域の医師や看護師、薬剤師、理学療法士、介護職員ら多職種のスタッフが連携し、より充実した「在宅医療(ケア)」の実現を目指す取り組みが動き出している。

 4月25日。医療法人葵会「もりおか往診クリニック」(木村幸博院長・盛岡市東見前)と協力関係にある病院や訪問看護ステーション、薬局、地域包括支援センターなどのスタッフが参加して結成した「チームもりおか」の第1回在宅ケアワーキング委員会が盛岡市のマリオスで開かれた。市や県、患者家族会の代表も含め約30人が集まり、市民フォーラムの開催など今年度の活動計画を確認。木村院長は「このメンバーなら、きっとうまくいく。やれることから確実に進めたい」と気持ちを引き締めた。

 2002年に開業した「もりおか往診クリニック」は訪問診療専門のクリニックとして、在宅医療に先駆的に取り組んできた。患者数は常時約300人。1カ月当たりの訪問診療は約800件。クリニックの医師や看護師はもちろん、患者宅に薬を届ける薬剤師や訪問リハビリを行う理学療法士、介護ヘルパー、ケア・マネージャー、患者がかかっていた総合病院のスタッフら地域の多職種の連携で患者を支える。

 スタッフが各施設のパソコンや携帯電話を通じて、患者の容体や処方した薬などの情報を入力、共有できるクラウド型情報共有システムを導入。24時間態勢で緊急時の呼び出しにも対応してきた。

 在宅で療養生活を送る患者は、高齢で通院が難しくなったケース、病院でのがん治療を終え、在宅での緩和ケアに移行したケース、難病で日常生活に医療的なケアが必要なケースなどさまざまだ。高齢者が体調を崩し、病院での治療は終えたものの、症状が進んで元いた施設には戻れず、やむなく在宅医療に移行するケースも少なくない。

 「社会的入院」を減らす国の方針もあり、在宅医療の需要は増す一方だが、市民の認知度は低い。訪問診療に携われる医師も不足している。盛岡市内に在宅療養支援診療所を標ぼうする診療所は41あるが、2011年度、自宅での「みとり」まで支援した患者が1人でもいた診療所は11カ所。症状が重く、医療依存度の高い患者を在宅でみるケースも増え、携わる介護スタッフ自身のスキルアップも求められているという。

 こうした課題に向き合うため、スタッフ同士の顔が見える関係を築こうと結成されたのがチームもりおかだ。今年度は看護職、介護職それぞれのスキルアップを目指す研修会など合わせて16回の研修会を計画。在宅での歯科治療やみとりのケア、介護食など実践に即した内容で、うち6回は多職種合同での研修を予定している。

 在宅医療のノウハウや相談窓口をまとめたパンフレットの作製や市民向けフォーラムの開催にも取り組み、在宅でも病院と同じように医療が受けられることをアピールする。さらに、看護大学と共同で、在宅医療の実態を把握するための調査研究を進める計画だ。

 事務局と相談窓口を担う、同法人の在宅医療連携拠点事業所チームもりおか(板垣園子所長)も発足。その取り組みは、「生活の質」を重視した医療と介護の提供を構築する厚労省のモデル事業に採択された。

 チームに参加する、県立中央病院の退院調整看護師・伊藤奈央さんは「退院後、在宅医療をどんな人が支えるのか顔の見える関係が築ければ、患者や家族にも自信を持って伝えることができる。患者や家族、地域のニーズを共有し、療養病床が減っても、困らない地域をつくっていく必要がある」と指摘する。

 関りゅう子同市医師会訪問看護ステーション所長も「病院から在宅医療の現場に移り、安らぎや癒やしといった在宅ならではの医療の重要性を再認識した。盛岡方式、岩手方式とでも呼べるような在宅医療の連携モデルができるといい」と期待する。

 板垣所長は往診クリニックの看護師として患者の家庭の事情も間近に見てきた。「在宅医療がすべてではない。自宅、慣れ親しんだ施設、娘の家など、自分が選んだ場所で最期を迎えられる環境を整えていくことこそが大切。選択肢の一つとして、在宅で医療を受ける道があることも広く伝えたい」と話す。どんな場所で最期を迎えたいか、そのために、どんな支援が必要なのか、元気なうちに一人ひとりが考え、家族で話し合っておくことが重要と力を込める。


■一人の日中を支えるケア―盛岡の関澤さん

  盛岡市緑が丘の関澤スゞ子さん(88)は毎日2回の訪問介護と月2回の訪問診療、週1回の訪問看護などを利用し、在宅で療養生活を送っている。

  一人息子の和弥さん(48)が仕事に出かけると、日中は一人きり。ほとんどベットの上での生活だ。それでも「かえって気楽。みんなよくやってくれて最高ですよ」と気丈に話す。

  ベット上に備えられたテレビで韓国ドラマや歌番組を見るのが楽しみ。緊急時はブザーを押せば、近くの盛岡訪問看護ステーション(蔀ひとみ所長)からスタッフが駆け付ける。

  関澤さん親子は2年ほど前、和弥さんの転勤で、静岡県熱海市から盛岡に転居。知らない土地でやっていけるか心配したが、最近はすっかり慣れた。

  和弥さんは毎朝、午前4時に起き、スゞ子さんの朝食と昼食を用意して家を出る。昼間2回、訪れるホームヘルパーが食事を温め、スゞ子さんの身の回りの世話をする。「他人を家に入れて、自分の親を見させるなんて」とためらいもあったが、熱海市で初めて訪問看護を受け入れ、考えが変わった。盛岡でも着いたその日に、高熱を出したスゞ子さんを訪問診療の医師が処置してくれ事なきを得た。

  「今は100%信頼している。自分の知らないことに壁を作っちゃいけない。何でも包み隠さず相談することが大事」と和弥さん。毎日を忙しく、やり繰りしながらも、納得がいく療養のスタイルを選択できたことに安堵の表情を浮かべる。  


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