盛岡タイムス Web News 2012年 5月 15日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 吉野重雄 城跡への道



左手で携帯電話
右手で自転車のハンドル
サーカスのように操りながら
人込みを颯爽と走り抜けていく
女子高生は 
春風の化身だ
 
桜山神社前の通りには
シャッターを下ろしたままの店が
また一軒増え
城跡公園への坂道を
息を整えながら登る
 
桜の蕾はいまだ固く
もっと背筋を伸ばして歩けと
言いたげにそっぽを向かれては
引き返すのも癪で
黙って
啄木の歌碑の前に佇むばかり
 
不来方の城跡は
戯れて寝転ぶほどの草も萌えず
七十六歳の心は
ただ茫々と
空に吸われて消える
 

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