盛岡タイムス Web News 2012年 5月 17日 (木)

       

■  〈夜空に夢見る星めぐり〉307 八木淳一郎 星、人、盛岡

 今年はさまざま珍しい天文現象があって、天文の当たり年と言われています。日食に代表されるように「食(しょく)」と呼ばれる現象もいくつか見られます。食というのは、ある天体が他の天体をかくす現象です。かくす天体が小さくかくされる天体が大きい場合は食とは言わず、通過や経過と呼びます。6月6日の金星の太陽面通過がその例です。

  さて、その食ですが、間近に迫った5月21日朝の金環日食がなんと言っても注目の的で、次回は北海道で2030年のことですから晴天を祈るばかりです。今回盛岡でも約90%太陽が欠け、金環でなくても結構見ごたえがあります。他に6月4日は部分月食、11月28日から29日にかけては半影月食、8月14日未明には金星食が起こります。

  今年は、流星群も好条件に恵まれています。8月12、13日のペルセウス座、11月17日頃のしし座、12月14日のふたご座流星群のいずれも、昨年と違って月明かりもなく大いに期待できそうです。

  さて今の夜空に目を向けてみましょう。3月初めに接近したあと遠ざかりつつある火星は、花見客に負けない位赤い色をして、しし座の1等星レグルスのそばに寄り添っています。大きな望遠鏡では、極冠と呼ばれる真っ白に輝く模様や、濃緑色調の模様をまだ見ることができます。

  日に日に小さく西空に低くなっていく火星に代わり、土星が旬を迎えています。春の代表的な星座であるおとめ座の1等星スピカと並んで、黄色く明るく光っています。輪の傾き具合といい、実に土星らしい美しい姿でため息ものです。本体の縞模様や輪の隙間など、ぜひ多くの方々にレンズを通して見ていただきたいものです。

  ところで、ガリレオは400年前、人類史上初めて天体に望遠鏡を向けました。物体の落下や振り子の運動など、ガリレオの観察と実験の手法はその後の科学の基本となりました。本物に接してこその科学教育はまた人材育成の原点とされます。

  そして経済的に決して豊かではない地域こそ、人材育成に力を注ぐべきだと言われます。人づくり街づくりが、過去や先人の遺産や功績に頼ったり、お金を言い訳におざなりになるなら情けないことです。盛岡はどうでしょう。

  時あたかも世界的な科学実験施設ILCの当地への誘致の話が持ち上がっています。ここで思い出されるのは、かつて冬季オリンピック誘致に盛岡市が立候補した時のことです。

  岩手県出身の柴田JOC委員長がいみじくも、山があればいいというのではない。人が問題なのだとおっしゃいました。長野が選ばれたことはご存じの通りです。盛岡市は最初から逃げ腰、および腰と言われていましたが、「喝」とも言うべき柴田さんのお言葉でした。

  さて、国際ILCの誘致競争に本気で取り組むつもりなら、賢治ゆかりの地盛岡市の教育や行政が、子どもたちの科学する心を育むことにどれほど抜きんでた熱意を持っているか、世界から注目されることになります。ここは行政も「のんびり、我が世の春」を捨てて、すすんで「めんどう」を選ぶべきです。南部盛岡にプライドがあれば、ですが。
(盛岡天文同好会会員)

 

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします