盛岡タイムス Web News 2012年 5月 29日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉149 及川彩子 初夏の味アスパラガス

     
   
     

 パソコンを開くと「世界一高い!幻のバッサーノ産ホワイトアスパラガス」という日本の通信販売広告がありました。

  バッサーノは、私の住むアジアゴ高原の下、南東に位置する平野部で、人口10万人。陶器の生産と、ベネチア貴族に愛された観光の町です。

  町の郊外に広大なアスパラガス畑が広がり、そこでタケノコのように、太くて白いアスパラガスが育ちます。初夏になると、イタリア各地の八百屋や市場に一気に出回ります〔写真〕。

  「世界一高い!」とは言っても、地元では1`500円程度。それでも他の野菜に比べたら、倍以上の値段です。

  ここで採れるアスパラガスは、野生を含めて3種類。日光を浴びたグリーンアスパラ、盛り土の中で育つ透きとおるようなホワイトアスパラ、そして野生の紫アスパラです。

  ホワイトが主流のイタリアでは、食べ方が極めてシンプル。レモンを数滴垂らしてゆでた後、冷水へ。付け合せは半熟のゆで卵。フォークの背でつぶし、塩、こしょう、オリーブオイルを加え、アスパラとあえながら食べます。

  歯ごたえのいいグリーンアスパラは、チーズを振りかけてオーブン焼きやピザの具に、またリゾット(雑炊)に利用します。バッサーノ産は、地質の恩恵か、味が濃厚でクリーミーと人気なのです。

  アスパラガスの語源は、ギリシャ語で「激しく裂ける」の意味。冬の間、土の中で栄養を蓄え、春とともに一気に伸び上がるアスパラには、神経系を守る効用があると言われます。学年末などで最も忙しく、ストレスのたまるこの時期、イタリア人には何よりの食材です。

  温室栽培などで、年中店に並ぶ日本と違い、残念ながら、6月も半ばを過ぎると、店先から消えてしまいます。旬は、一瞬の輝き。次に味わえるのは、来年の春。待ちわびるからこそ貴重な味。それを守るのがスローフードの基本のようです。


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