盛岡タイムス Web News 2012年 5月 30日 (水)

       

■  〈夜空に見夢見る星めぐり〉308 八木淳一郎 金星の太陽面通過

 金環日食(盛岡では部分日食)の興奮が鎮まったばかりですが、今度は金星の太陽面(日面)通過というこれまた希有なる天文現象が、6月6日に訪れます。金環日食のときと違って、天候さえ良ければ日本全国で見ることができます。

  ただし、これも太陽の強烈な熱と光をカットして観察しなければなりませんから、それなりの装備や機材が必要となります。望遠鏡の対物レンズの前面に特殊な太陽観測用フィルターを付けてのぞく方法や、太陽投影板という白いスクリーンをのぞく側に装着して見る方法があります。投影板を用いれば、大勢で一緒に観察できるメリットがあります。

  もし、公共の天体観測の施設があれば、そのような設備のもと、安全にしっかりと珍しい天文現象を観察できます。

  しかも太陽望遠鏡というものがありますと、他にもさまざまな太陽面の現象を一緒に見ることができます。金星は厚い雲に被われていますが、太陽を背景にした真っ黒なシルエットとともに、うっすらとした金星を包む大気の輪郭も見ることができるかもしれません。

  通過の始まりは太陽面の北西側の縁から午前7時10分過ぎに、終了は太陽面の東北東側の縁で、午後1時48分少し前と予報されています。この現象を境に、金星は宵の明星から明けの明星へと移っていきます。

  さて、こうした自然現象をじかに観察することはとても意義深い大切なことです。ごくたまになあに、子どもらにそんなもの見せてもわかりもしないんだからむだなことだ?という意見を耳にすることがあります。

  果たしてそうでしょうか。自然の姿や現象に触れることが大きな感動を生む―それは単に理科の知識を増やすだけのこととは違います。

  仙台市では、戦後のわが国の復興には子どもたちの科学教育が大切であるとの考えで、昭和􏇬年という貧しい時代、ぜいたくとも思われる市立天文台をつくりました。それから半世紀以上経た今でも、盛岡の子どもたちにはこういったものは必要ないとの市当局のご判断ですが、残念を通り越して悲しむべきことです。

  30年前、盛岡にプラネタリウムが設置されたときのこと。プラネタリウムメーカーでは本物も一緒に見せることでプラネタリウムの真価が発揮されるのだという考えを当然持っているのですが、盛岡市が他の都市と違って本物を見せる設備は必要ないとし、メーカーの方々が不思議そうに首をひねっていたのが印象的でした。

  宮澤賢治ゆかりの盛岡のことですから、きっと何か独自の教育方針をお持ちなのかもしれませんね、と話しておりましたが…。

  次回の金星の太陽面通過が見られるのは105年後の西暦2117年と計算されています。そのころにはきっと教育方針が改められていて、盛岡の子どもたちも、先進都市の子どもたちと同じように、居ながらにして自然が営む神秘の現象をすばらしい設備のもとで観察できることでしょう。
(盛岡天文同好会会員)


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