盛岡タイムス Web News 2012年 6月 1日 (金)

       

■  〈わが歳時記〉 高橋爾郎 6月

 水無月6月、いまわが家では牡丹が満開だ。真紅、淡紅、薄紫、白の花が競って咲き盛っている。樹齢は20年以上になる。ことしは天気がいいので、花が長く毎日たのしんでいる。牡丹はまさに花の女王といわれるだけに近付きがたい風格と気品がある。だが美しいだけに雨に打たれて散る様子は痛ましく無惨でさえある。だから散る前に全部切ってしまうのだ。いつまで保つのだろうか。
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  東北六魂祭はさいわい好天に恵まれ、たくさんの人出で賑(にぎ)わい大盛況だった。東北6県の代表的な夏祭りが集結して、それぞれ華やかな踊りや威勢のいい演技を披露してくれ、大震災復興への思いを高らかにアピールした。

  ぼくも朝から身仕度をして妻と出掛けた。岩手公園での開祭式もそこそこにして中央通り県庁前で待つこと2時間あまり、やがて秋田竿燈が交差点で伝統の技を見せてくれる。青森ねぶた祭り、山形花笠まつり、仙台七夕のすずめ踊り、福島わらじまつり、最後に地元盛岡の山車とさんさ踊りの出番だ。

  眉(まゆ)の凛々(りり)しい毘沙門天、空にせり上るからくれないの青森ねぶたの勇壮さ、賑やかなハネトの踊り。鮮やかな紅花の付いた笠、揃(そろ)いの赤い衣装でキビキビとそしてしなやかな踊り手の花笠まつり。道いちめん上下しながら回転する長さ12b、重さ2dの大わらじのダイナミックなわらじまつり、あとにつづく現代的ダンスの楽しさ。両手の扇子を振って飛び跳ねる雀さながらのコミカルな仙台のすずめ踊りの面白さ。稲穂をイメージした46個の堤灯が風に撓(たわ)ひ揺れる。肩や額に支える差し手の見事な技の秋田竿燈。最後はいわずもかな盛岡の山車とさんさ踊りだ。夏空にひびきわたる数千の太鼓とひたすら踊る手ぶり身ぶりの優しさに思わず胸が熱くなってしまう。パレードの戻り囃子(ばやし)もよかった。出演した人々の満ち足りた笑顔、笑顔。観衆の惜しみない拍手。ほんとうにありがとうございました。
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  平泉中尊寺の秘仏「一字金輪仏頂尊(いちじきんりんぶつちょうそん)坐像」が􏇛年ぶりに開帳されることになった。世界遺産登録を記念し、さらには東日本大震災の一日も早い復興を祈念してのご開帳で、来月の7月17日から11月11日までという。

  この仏像は別に「人肌の如来」と称されている。からだ全体が真っ白い人の肌のように彩色され、細い眉がひかれ、玉眼がはめこまれ、唇には紅がひかれていて、あたかも女の生身の人間のような仏様である。三代秀衡の念持仏だったと伝えられている。この仏像はからだの前面部分しか彫られていない珍しい姿である。いわば懸け仏風の背面のない仏像だ。

  ぼくは以前、2回ほどこの仏像にお目にかかっているが、そのあまりの優美さに息をのむばかりだった。いつの頃からか、秘仏として公開されなくなったのだった。当時「秀衡の護持仏人肌如来のくちびるにほふ春は来にけり」の短歌を作ったのだった。ぜひ、またのご対面を楽しみにしている。(歌誌編集者)  


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