盛岡タイムス Web News 2012年 6月 8日 (金)

       

■ 音色でつなぐ絆プロジェクト本格始動 被災木で作ったバイオリン

     
  命をつなぐ木魂(こだま)の会事務局の大庭泰三さん、又川俊三会長、日當和孝副会長(左から)=1日盛岡市で  
   命をつなぐ木魂(こだま)の会事務局の大庭泰三さん、又川俊三会長、日當和孝副会長(左から)=1日盛岡市で
 

 東日本大震災津波で流失した高田松原のマツや建材から作られたバイオリンを、世界中のバイオリニストらがリレーして演奏する「千の音色でつなぐ絆」プロジェクトが展開されている。演奏を通して被災地への思いを分かち合い、記憶を風化させることなく語り継ぐ取り組み。推進組織の「命をつなぐ木魂(こだま)の会」(又川俊三会長)はプロ、アマ、ジャンルを問わず、コンサートの開催などに協力する賛同者を募っている。

  プロジェクトは東京やイタリアに工房を構え、ストラディバリウスなど名器の修復・鑑定で世界的に知られるバイオリン製作者の中澤宗幸さんが発案した。被災地の文化復興を支援したいと考えていた中澤さんは昨年12月、本県を訪問。県内の製材会社の協力で、がれきの中から弦楽器にふさわしいマツとカエデを入手し、2丁のバイオリンを製作した。

  主な材料は津波で流失した家の床柱や梁(はり)。表板と裏板をつなぐマッチ棒ほどの「魂柱」は、高田松原のマツを使った。被災地への祈りを込めたバイオリンが、思いを共有する人の手から手にわたり、音を奏でることで支援の輪を広げるのが狙いだ。

  3月11日には陸前高田市の追悼式で、現役最高齢のイスラエル人マエストロ、イヴリー・ギトリスさん(89)が、このバイオリンで献奏。会場を包む深みのある演奏が、被災者を慰めた。バイオリンはその後、国内外の演奏家の手をリレーし、音に磨きをかけている。これまでに国内では長野県上田市など7会場でコンサートが開催された。今月21日からフランス・パリで始まる震災復興支援のイベントでもギトリスさんらが演奏する。

  本県の沿岸被災地での初コンサートは「海の日」にちなみ7月20日。高田一中と大船渡北小が会場で、県内外の演奏家が協力する予定だ。

  バイオリンは年間100人、10年で1000人による演奏が目標。著名な音楽家による演奏会だけでなく、ホームコンサートや文化祭でのリレー演奏など、思いを共有する人が、それぞれにあった形で参加、協力できるプロジェクトを目指している。盛岡地域の有志がバイオリンを使ったチャリティーコンサートを開き、支援金を被災地のために役立てる方法なども歓迎したいという。

     
   流失した高田松原のマツなどからバイオリンを製作した中澤宗幸さん=命をつなぐ木魂(こだま)の会提供  
   流失した高田松原のマツなどからバイオリンを製作した中澤宗幸さん=命をつなぐ木魂(こだま)の会提供  


  木魂の会事務局の大庭泰三さん(55)=東京都八王子市=は、大船渡市に知人がいた縁で、震災後、繰り返し同市に足を運び、支援活動に取り組んできた。「自分なりに何ができるか考えた。暮らしの空間に、ふと流れる音楽が立ち上がるきっかけになることがある。ちょっとだけ背中を押す手伝いができれば」と話す。中澤さんは、被災木材からビオラとチェロを製作する準備も進めているという。

  バイオリンのための木材調達に協力し、木魂の会の副会長を務める日當和孝さん(54)=久慈市=は、自身も経営する製材所を津波で流失した。「岩手の山で育った木が家となり、がれきとなっても、燃やされることなく楽器として役に立つ。木にとってもありがたいこと。活動に加わることで自分自身の復興にもつながっている」と語る。

  又川会長(67)=盛岡市=は「音楽に言葉はいらない。民族や世代も超えて魂に訴える。息の長い活動にしたい」と力を込める。

  問い合わせは大庭さん(電話090―2679―3809)へ。



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