盛岡タイムス Web News 2012年 6月 8日 (金)

       

■ 〈大連通信〉16 南部駒蔵 怒らないで

 K君は北京に行った時、故宮をバックに恋人の写真を撮ろうとしてカメラを向けた。多くの中国人はそれを無視して平気で、その前を横切った。団体旅行で来ていた日本人は、皆、撮影の邪魔にならないように待ってくれた。恋人を「かわいいね」などと言って声をかけてくれた。

  北京でタクシーに乗った。運転手は車のスピードを上げて、ドアの窓をおろして痰(たん)を吐き出した。K君は不愉快に感じた。しかし、ここで注意すれば、けんかになる。K君は黙って我慢するしかなかった。

  K君の恋人は、中国の社会、中国人に対してしばしば腹を立て、警察にも少し反抗的な態度をとったりするK君に言った。

  「ここは、中国よ。怒らないで」(チェシ、ザイチョンクオ、ビエシャンチー)と。

  私はK君の話を聞いて感じた。人をだますペテンも多く、マナーも悪い、不愉快な腹の立つことも多い中国で暮らしていくためには、いろいろなことを我慢し、忍耐して生きていかなくてはならない。

  「ここは、中国よ。怒らないで」という言葉は、中国の教養ある人の切実な叫びにも似た声として忘れられない言葉となった。

  中国に怒りこらえて暮らしたる 青年のあり 忘るべからず
  (元岩手医大教授)


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