盛岡タイムス Web News 2012年 6月 28日 (木)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉310 八木淳一郎 台風と星座

 6月21日に夏至を迎えたばかりですから、ここしばらくは夜のとばりが降りるのは遅く、太陽は午後7時を過ぎた頃に沈みます。しかもこの季節は晴れ間がのぞくことも少なくて、満天の星空にお目にかかる機会がめったにありません。しかしその分、梅雨の晴れ間には意外とすばらしく澄んだ星空が現れるものです。ぜひ、そういった数少ないチャンスに取り返しをつけてみましょう。

  夜の9時頃、春の星座の一つ、うしかい座のアルクトウルスは南中を過ぎて少し西に傾いています。南中している星座はかんむり座やへび座(頭部)、てんびん座などです。この東側には続々と夏の星座たちが登場してきますが、まずは天の川の西岸のあたりを眺めてみましょう。どれも有名な、ヘルクレス、へびつかい、さそり、といったところですが、さて北の空はどうでしょうか。こぐま座とおおぐま座の北斗七星の間からこと座のベガの近くまで伸びる、くねくねとした星座があります。りゅう座という星座ですがご存じない方も多いかもしれません。

  ところで先日、8年ぶりという6月の台風が日本を直撃し、甚大な被害をもたらしましたが、実はりゅう座は台風と大いに関係があるのです。古代エジプトでは、りゅう座は醜く乱暴で、とにかく考えられる世の中の悪のすべてを持った化け物の代表のように考えられていて、ティフォーンの名が与えられました。さて、ティフォーン―察しのいい方はもうお分かりかもしれません。英語のタイフーン、すなわち日本語の台風の語源となっているのがこのりゅう座というわけです。りゅう座には明るい目立つ星がないのですが、主星はツーバンという名前の4等星で、5000年前には北極星の役目を担う星でした。りゅう座にはツーバンよりもっと明るい星があるのですが、かつて北極星であったことから主星の名誉を与えられたと言われます。しかも、現在の北極星よりももっと、天の北極に近い位置にあったのですから。

  ギリシャ神話では、りゅうは食べた者が不老不死の若さを授かるという黄金のリンゴの木を守る役目をもった怪物です。勇士ヘルクレスは黄金のリンゴを手に入れるのが冒険の旅の目的の一つでした。首尾よくリンゴを手にするのですが、果たしてりゅうと戦ったのかは不明です。しかし、星座絵ではヘルクレスの足がりゅうの頭を押さえつけるようにしているようです。

  上陸する前に、ヘルクレスに台風をやっつけてもらえればいいのですがそれはかなわぬことです。2等星が1個の他はみな3等星、4等星、5等星の暗い星ばかりのりゅう座ですが、せめて、台風一過や梅雨の晴れ間に星々をたどりながら、古代のロマンに思いをはせてみたいものです。
  (盛岡天文同好会会員)

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