盛岡タイムス Web News 2012年 7月 1日 (日)

       

■ 〈ジジからの絵手紙〉14 菅森幸一「映画が見れる」

     
   
     
   ラジオが娯楽の王様なら、さしずめ映画は神様みたいなもんだ。当時の盛岡の常設館は数少なく、最初は洋画も邦画も戦前のリバイバルがほとんどだったが、それでも連日超満員の大盛況だった。

  ジジの母さんもよく映画に連れて行ってくれた。たいていは「愛染かつら」や「新妻鏡」といった旧作メロドラマが多かったが、カタカタと鳴る映写機の音、画面からの音声、独特の観客席のにおいなどが、廊下から場内への重いドアを開けた瞬間、一斉にジジの中に飛び込んでくるドキドキ感がたまらなく好きだった。

  洋画は難解なものが多く、画面の端に映し出される日本語訳をつま先立ちに伸び上がり、必死に読み取ろうとした。初めて見たのが少女感化院が舞台の「格子なき牢獄」でフランスの不良少女が皆美人なのに驚嘆し「春の序曲」「オーケストラの少女」のデイアナ・ダービンの透き通った歌声に酔いしれた。

  やがて日本映画の制作も始まり、焼け跡でドラム缶の風呂に入りながら、「私の青空」を歌う「東京五人男」の古川ロッパの姿を見て、本当に平和が来たんだと実感させられたものだった。


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