盛岡タイムス Web News 2012年 7月 18日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉290 「丹田呼吸」伊藤幸子

 夏痩のつひにイエスに及ばざる 上田五千石

  高齢者と仕分けをされる年代になったら、とみに姿勢が悪くなったような感じがする。はた目にもそう映るらしく、過日、声楽家の先生より「丹田呼吸」の本を頂いた。「釈迦が説いた健康法〈調和道協会〉の会長は現在日野原重明先生が三代目の会長として頑張って居ります。是非お読み下さい。白井眞一郎」とあり、医学博士村木弘昌著「健心・健体呼吸法」なる一書である。

  「むずかしそう」と思ったが「まあ読んでごらんなさい」とすすめられて読み始めたらおもしろく、すぐ実行したくなるご本。まず「現代人が忘れた〈正しい息の吐き方〉」とある。そして「怒責(どせき)」「昏沈(こんじん)」という語が出てくる。その怒責とは、典型的な悪の呼吸法。いきむことで、これは強いストレスにさらされているうちに怒りが蓄積し、心身が強い興奮緊張状態におちいって命とりになることがある。

  さらに昏沈とは道元の言葉で「暗く沈んだ心の状態」のこと。ストレスに負けて悲しみ不安の気持ちの切りかえができぬままノイローゼになってしまうと述べられる。

  なんだかページを開いたとたん、思い当たることばかり。だからこそ、正しい呼吸法をと読み進むと「不老長寿の薬を製造するところが実は人間の体内にある」という。それこそ「丹田」であると。釈尊が考案し、近世に白隠禅師が実践した丹田呼吸こそ七凶四邪の入りこむ余地のない平常心を育てると説く。

  ならば、その呼吸法とは│。吸うより吐くが大事。肺には肺胞が左右で約3億もある。炭酸ガスが充満しているので、まず吐いて空っぽにする。「丹田呼吸は、みずおちに深い括(くび)れをつくりつつ、息を吐きながら強い腹圧をかける呼吸法」として図解もされている。

  さて、その実践もかねて日野原重明先生の「丹田呼吸」の講演が7月7日、八戸市で開催された由。その日はオペラ歌手畑中良輔先生(90歳)の「お別れの会」が青山葬儀所で行われ、東京芸大後輩の白井先生はご欠席を大層残念がられて八戸の会場に赴かれたと伺った。同時期、畑中先生と活躍されたソプラノ歌手大谷冽(きよ)子さんも5月8日、93歳で逝去。クラシック音楽評論家吉田秀和氏は5月22日、98歳の訃報が伝えられた。惜しみて余りある生ではあるけれど、舞台活動をされる芸術家の方々は総じてご長命のように見うけられる。まず実践、私も丹田呼吸を修得して「長寿の芸」を学びたい。
(八幡平市、歌人)


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