盛岡タイムス Web News 2012年 7月 30日 (月)

       

■ 〈幸遊記〉82 照井顕 江川三郎のサウンドナチュラーレ

 音響評論家、オーディオ研究家として、つとにその名を知られる江川工房の代表・江川三郎さんが、この2012年、7月10日、満80才を迎えたことから、同日、東京中野駅前の四川中華料理店を借り切っての“祝賀会”が開催された。参集したのは、江川さんを慕うオーディオファンや関係者等全国から50名。

  オーディオアクセサリー誌を中心に、独自の実験の工程や結果をありのままに発表しながら、良い音楽を、良い音で聴く。その、あたりまえのテーマに、人生の大半を、オーディオ聴診器のごとく、音の再生に全身全霊を傾け続けて来た人。

  それは、音楽家からステレオ機器の専門家、そしてリスナーに至るまで、音楽に携わる全ての人々に注ぐ深い愛情が、彼の根底にあったからに他ならない。事実、僕も江川氏と知り合って30有余年も経ちましたが、ジャズ喫茶の命ともいえる、ステレオ(オーディオ)の鳴らし方に関する、ありとあらゆる事柄に於いてお世話になってきました。そのお陰で、今日まで江川流に「自分自身の感覚を信じて、全ての物事を判断する自分」を培ってきたのです。

  彼は「物理的なデータよりも、我々には五感という優秀な測定機能がある」と語り、それを頼りに、オーディオの不必要な回路や部品の外しと補強、電源やケーブル、セッティングや反射、吸音、防震、機器の材質、等等あらゆることについて、徹底した実験につぐ実験を繰り返し、「オーディオ・実験室」の異名を取り、僕の店でも、その実験室を何度か開いてくれた。

  僕は、時折用事で上京した時など、突然ご自宅の実験室へ顔を出しても、ニコニコと迎え入れてくれ、自分のベッドを空けて泊めてくれたことさえあった。料理バサミならぬオーディオ工具のニッパを使って切る、ニッパシの料理や、目の前で石臼をモーターで回す、自作製粉機。それを自分で考案した十割そばの作り方セットを使って打った「もりそば」の忘れ難い味は、彼が、愛してきたナチュラルな音と一緒。

  誕生日パーティーで、彼は「ぼくのために、集まってくれてありがとう。夢みたいです。私がいなくなっても、交流してください」と言って皆を笑わせた。(開運橋のジョニー店主)

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