盛岡タイムス Web News 2012年 8月  1日 (水)

       

■ 〈日々つれづれ〉132「猛暑」三浦勲夫

 北国岩手にも猛暑が続いている。30度以上の「真夏日」だ。その前は20度台の中に2、3日ほど30度に達した日があった。全国には35度以上の「猛暑日」があちこちに出ているが、幸いこれは岩手にはあまり縁がない。

  同じ商品の価格でも300円と298円とでは、購買意欲にかなり差が出る。「イチキュッパ」とか「ニーキュッパ」とかが売れる。気温でも30度と29・8度では気分的に暑さ加減が違う。天気予報も「ええっ、きょうも30度いくの?」では朝からゲンナリする。

  こちらは古いタイプの北国育ちで、暑いと言っても「エアコン」が思い浮かばない。窓や戸を開け、うちわや扇風機を使う。節電の夏にも容易に対応できる。昨日は家族4人の来客があり、家人がエアコンを今夏初めて稼働した。こちらはエアコンの存在をほとんど忘れていた。昨年、お産のために盛岡に帰って来た娘のために設置したものだ。

  暑いと頭が鈍り、物忘れする。同じ名前の電気製品大量販店が市内に何軒かある。昨日行った店を別の場所の同名店と勘違いして、テレビ受像機を見て回った。いつもの場所にいつもの製品がない。陳列場所を変えたのはロンドン・オリンピック鑑賞用に大型テレビを売り込もうという魂胆かと思った。自分の間違いに気付いたのは、翌日だった。

  しかし物忘れは年のせいもある。暑さ寒さと関係ない。今朝はパソコンを二階から一階に移した。エアコンの下なら涼しく仕事ができる。20分ほど仕事をしたら画面が暗くなった。「わっ、大変。パソコンが壊れた!」しかしよく見ると、パソコンの電源コードを電源に差し込んでいなかった。それで充電容量がゼロになったのだった。

  自分の周囲の人たちも物忘れが多くなる。ある人と7月12日に会う約束をした。その人の都合が悪くなり延ばした。では14日にしましょうかと言ったら、その人はその日はダメで一週間遅らせて21日にしましょうと言った。こちらは「21日ですね」と念を押し、「そうです」という返事を聴いてスケジュール帳に記入した。21日に会ったが「先週待っていましたよ」と相手は言う。これは困った状況だ。

  自分には自信があるつもりだが証拠がない。むこうも自信を持っている。水掛け論になる。「盲人が盲人を道案内する」という英語のことわざがある。このような状況に立ちいたったら、証人が必要だ。二人だけの押し問答が避けられる。ところが世の中は証人も立てず、当事者だけで処理しなければならないことが多い。水掛け論を水に流さざるを得ない場合もある。

  話は暑さによる物忘れと年を取るにつれての物忘れだった。最後に、物忘れではないが、一方は社交辞令を用い、他方は礼をして忘れたふりと言うことがある。「このたびこちらに転居しました。こちらにおいでの節はどうぞお立ち寄りください」という転居あいさつがある。

  この種のあいさつは日本では額面通りに受け取らないし、実際大勢の人に来られては来られる人も困る。だからおおかたの日本人は訪問を遠慮する。しかし、異文化の人たちの中には額面通りに受け取る人たちも多い。日本的行動と非日本的行動の相違もお互いにわきまえないといけない時代だ。
  (岩手大学名誉教授・元放送大学客員教授)


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