盛岡タイムス Web News 2012年 8月  6日 (月)

       

■  自然の脅威を理解し防災に 大震災から何を学ぶべきか。全国地学教育研究大会

     
  シンポジウム「東日本大震災、いわての検証と教訓」  
  シンポジウム「東日本大震災、いわての検証と教訓」
 
  2012年度全国地学教育研究大会・日本地学教育学会第66回全国大会は4日から3日間の日程で、盛岡市上田の岩手大学を主会場に開かれている。全国から地学教育にかかわる研究者や教員、学生ら約200人が参加。「東日本大震災から地学教育は何を学ぶべきか」をテーマに、防災や理科教育のあり方について考えを深めた。5日は「東日本大震災、いわての検証と教訓」と題したシンポジウムが開かれ、行政担当者や教員、学生が震災津波の体験を発表。来場者とも意見を交わしながら、熱心に議論した。

  本県では自主的な避難行動で児童生徒全員が助かった鵜住居小、釜石東中のように、日ごろの防災教育が一定の成果を挙げた。一方、地域住民の約40%が、激しい揺れを感じ、津波情報に接していながら、すぐに避難しようとは考えなかったとの調査報告もあり、防災意識の甘さやハザードマップの過信が問題になっている。

  震災当時、県庁で対応に当たった県総合防災室の越野修三氏は「子どもや要援護者を助けに行って命を落とした人が多い。『津波てんでんこ』は、互いの信頼関係がなければ成り立たない」と強調。地域を巻き込んだ防災意識の充実強化、警報の伝達方法の改善の必要性を指摘した。

  校内で被災した高田高校の伊勢勤子教諭は、震災当日の混乱や何もない中で始まった避難生活の模様を報告。多くの人が家や親しい人を失った中で「教員ですら当時を冷静に振り返ることはまだ難しい。何が課題で、どうしていくべきか。客観的に話を聞き、まとめてくれるような支援者も必要ではないか」と話した。助かった命も失われている厳しい現実に触れ、「生き残ることは大事。だが、前向きに生き続けることがもっと大事」と訴えた。

  久慈湊小の小野寺俊哉副校長は10年度から取り組んだ「久慈湊小津波防災プロジェクト」を紹介した。避難場所や避難経路を「最悪」の事態を想定して大幅に見直し、地域や父母を巻き込んだ防災訓練など実効性のあるものに高めた。就学中、子どもたちは、必ずここに避難するという「約束」の徹底が、非常時に命を守ることにつながるという。「完全でなくともすぐに取り組めることがある。一つでも、二つでも実践し、継続すること。一人の力だけでなく、組織で動くことが重要だ」と話した。津波の歴史や防災活動を児童自ら調べる総合学習についても説明し、地域を愛する教育活動の意義を語った。

  会場からは「災害の規模や発生を予測する研究が熱心に行われているが、地球の長い歴史の中では想定できないような大きなイベントが確実にあるということを伝えるべき。その表現が足りなかったのではないか」と地学教育の役割を示唆する発言もあった。

  大会実行委員長の名越利幸岩手大教育学部教授は「地学は、まさに自然の脅威を研究対象とし、システムを理解し、その成果を防災に応用する教科。子どもたちにどのような地学リテラシーを身に付けさせればいいか。震災津波の経験を教訓に考えを深め、発信していかなければいけない」と話した。


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