盛岡タイムス Web News 2012年 8月  7日 (火)

       

■ 〈詩人のポスト〉 吉野重雄 閉校の庭


山伏トンネルを
東から西に抜けると
そこは三千石の里
和賀岳と高下岳が
並んで迎えてくれる

沢内街道に沿った学校の
白くモダンな校舎には
人の気配はなく
校庭のブランコは
閉校式のあの日から
揺れることを忘れてしまった

子どもたちに
人気のあった雲梯は
仲良く二つ並んで
手持ち無沙汰そう
蟻たちが集まって
渡ろうか渡るまいかと
相談している

遥か南の相馬では
放射能の除染と称して
校庭の土を
根こそぎ交換したと聞くが
子どもたちの
汗と歓声が沁みこんだ
土をそっくり残したまま
この学校は
閉じられた

校舎正面の
丸く大きな時計の針は
四時二十五分で止まり
朝から夕方まで
あんなに元気で
お喋りだったスピーカーは
何も語ってはくれない


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