盛岡タイムス Web News 2012年 8月 22日 (水)

       

■ 〈日々つれづれ〉135 三浦勲夫 「なでしこ」に思う

 なでしこジャパンはロンドン・オリンピックでも大活躍した。銀メダルに終わったが、昨年のワールド・カップ(於ドイツ)優勝以来、金メダル期待の重圧を1年以上背負ってきた。その揚げ句にオリンピックの決勝まで勝ち上がった。ワールド・カップでは東日本大震災津波の映像を見て、悲劇日本のために闘志をふるい起したという。その闘志を結果に出せたのも奇跡的だが、それまでの実力が十分に成長していたからだろう。

  スポーツはルールのある勝負である。勝負は勝負として勝者の栄光をたたえ、敗者の健闘もたたえる。オリンピックは「平和の祭典」でもあるが、東西対立が激しかったころ、モスクワ大会(80年)を西側諸国がボイコットし、ロス・アンゼルス大会(84年)を東側諸国がボイコットした。ミュンヘン大会(72年)ではイスラエル選手11名がパレスチナ・ゲリラに襲撃され殺されたこともあった。政治の影はオリンピックをもたびたび覆った。

  しかしその都度、世論の良識が沸き起こり「政治の影」払しょくに力を尽くしてきた。平和の永続も困難だが、暴力支配の永続も不可能であることを歴史は示してきた。人間には相反する欲求、つまり平和を求める欲求と、力で相手をねじ伏せようとする欲求がある。その対立を理性的に解決するには、日頃からの交流と理解が必要だ。

  戦いを防ぐため、国際司法、国際連合、官民国際交流などの働きもある。自由と独立を守る防衛力も必要だし、国力を維持拡大する産業振興も必要となる。日本は現在、北方領土、尖閣諸島、竹島などという領土問題をロシア、中国、韓国との間に抱え、北朝鮮との間には拉致問題がある。それらの解決のためには当事者の粘り強い話し合いや国際的な協力の確保が必要不可欠である。

  政府の国防基本方針は日米の緊密な協力関係を基盤とする。しかし協力関係も普天間基地移設問題に対する沖縄県民の強い反対や、事故の多いオスプレイ機配備に対する基地住民の反発は強い。一方、政治的決断は対立意見を結局は無視し実行される。

  しかし基地住民への騒音や暴行等の被害に対する抗議、憤りを払しょくすることはできない。当然の生存権だからだ。国の防衛と国民の安全を両立させるにはどこかにしわ寄せがくる。国政に声を届ける運動と痛みを分かち軽減する努力は続く。政治的対話は、私的対話と同一ではないが、それなりの原理・原則はあり、両者は補完関係にもある。

  外国語が堪能なスポーツ関係者としては、サッカーの中田英寿、ゴルフの宮里藍、石川遼、卓球の福原愛、野球のイチロー、ハンマー投げの室伏広治らがいる。スポーツ外交にどれだけ外国語も役だっているか。

  田中前防衛大臣は国防に関する基礎知識の不足ゆえ罷免され、変わった森本大臣も韓国大統領の竹島訪問に対する「韓国の内政」発言が評論家的で、自民党から問責に値するとされる。「経済一流、政治三流」と言われたのはバブル経済に至る過程だった。政治は発言力でもある。政治家がまず英語でも交流、交渉する範を示さねばならない。政治のリーダーは政治状況を十分学び、政治家同士の日常場面、国際場面での会話力や交渉力も持つことが課題である。
  (岩手大学名誉教授・元放送大学客員教授)


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