盛岡タイムス Web News 2012年 8月 28日 (火)

       

■  〈あなたへの手紙〉かしわばらくみこ 少女

 
日傘の向こうに逃げ水が見える
 
灼熱のバス通り
追われるように路地に入ると
家々の影が庇(ひさし)をつくり
其処には
オニヤンマが
低く脇を抜けてゆくみたいな
風が吹いていた
 
ふう と傘を閉じると
カリッと音がし
白桃(もも)の香りがひろがった
ミニトマトが鈴なりの小さな花壇
煉瓦の柵に寄りかかり
老婦人が白桃を握り
わたしを見て笑っている
 
わたしも笑った
 
いたずらを見られた、
行儀が悪いとしかられた、
恥ずかしいような
照れくさいような
少女の仕種
 
隣家のドアが開いて
おしゃべりが聞こえる
カリッ、カリッ、
またひとつ
白桃が笑った
なつかしい夏の日


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