盛岡タイムス Web News 2012年 9月 1日 (土)

       

■ 〈舗石の足音〉419 藤村孝一 まちづくりと美的感覚と政治

 1985年7月29日から8月9日まで、会員でもないのに「岩手県ピアノ音楽研究会」の創立20周年記念のヨーロッパ旅行に参加させていただくまで、わたしの日本の街は美しかった。

  古来、日本人も優れた美術作品、建築物を創造してきた。しかし、建築技術の発達により高層ビルディングを建てることが可能になった。建物自体は外側も中も美しいのだが、街の中での周囲との関連、釣り合い、つまり景観を考えることが不足しているようだ。

  最近、東京駅の赤れんがの建物が建築当時のように改築されたというニュースをテレビで見た。建物の上の空間(空中)は空けて置くという。大変素晴らしいことだ。しかし、「それまでだ」と思った。やはり、日本である。「空中権」というものがあって、駅の上部の空を空ける代わり、空中権を隣のビルに譲るそうだ。今でも左側に高いビルがあるのに、右側のビルをさらに高くするようだ。日本で建築物を見る時には、周囲は絶対見ないようにする注意と能力が必要である。

  日本で生活し、日本で最期を迎えるには、ヨーロッパの街の風景など忘れようとして10回程度で旅行をやめたが、ロンドンオリンピックで街が写し出され、また、思い出してしまった。

  パリで高さの点で目立つのは、エッフェル塔と、それより3`ぐらい南東にあるモンパルナスタワーだけである。タワーと言っても59階(209b)のビルディング。モンパルナス地区の再開発の一環として造られたというが、これだけでやめてしまったのだろうか。近くにモンパルナス駅、モンパルナス墓地がある。

  あと、エッフェル塔の1`くらい南西にいくらか高めのビル群がある。それぐらいだと思う。13年前までに見聞したことだが、今でもそんなに街は変わっていないと思う。日本と違って政治的な規制が強く加えられるからである。

  パリ人(フランス人)は全く現代建築(高層ビル)に関心がないのだろうか。観光旅行でパリにいらした方はお気付きだろうが、有名な凱旋門に行き、降りるなり門の前方(北西側)を見るなりするとかなたに懐かしい高層ビル群が見える。「ラ・デファンス」である。

  プラットホーム状の人工地盤を造り、車道、鉄道、駐車場、動力源は皆地下に建設したという。地上には幾十もの高層ビルが建ち、商店街があり、中央部には細長い公園がある。そこには数々の彫刻が置かれている。わたしは一度だけ、地下鉄で行ったことがある。年末か年始の休日だったと思う。商店街を見ることはできなかったが、それでも地下鉄の乗降客が多くいた。

  細長い公園が続いているその2`ぐらい奥(西端)にはグランド・アルシュ(新凱旋門)が建っていた。凱旋門がすっぽり中に入ってしまうような巨大なものである。だが、これは単なる門ではなく、人々が働くビルでもあった。そういえば窓のようなものが数多く見えた。何と、コンコルド広場からシャンゼリゼ大通りを通り、凱旋門を過ぎ、8`近くも真っすぐグランド・アルシュまで続いているのであった。

  高層ビル群を建設するにもフランス人は美的感覚を働かせているのだ。


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