盛岡タイムス Web News 2012年 9月 12日 (水)

       

■ 〈日々つれづれ〉138 三浦勲夫 地球幸福度

 ブータン国王夫妻が昨年訪日され、「幸せの国」ブータンが脚光を浴びた。中国とインドに挟まれたヒマラヤの国ブータンは1972年以来「幸せ」を追求する施策を5年計画で実施している。日本国憲法も健康で文化的な最低限度の生活を営むことを保証する。そこで幸福、健康、文化的の内容は何かが問題となる。

  従来、国民生活の豊かさを測る指標としては、国民総生産(GDP)や人間開発指数(HDI)があった。GDPは国民の生産活動を数字化し、HDIは国民生活の質や発展度合を数字化するが、これらが金銭的価値に重点を置きすぎているという批判があった。そこで2006年に英国の環境保護団体「地球の友」(Friends of Earth)が地球幸福度(HPI)(Happy Planet Index)という指数を提唱した。人間の幸福感や環境への負荷を取り上げて、文明活動が将来にわたって持続可能であるかどうかという点を表すものとされる。

  HPIのベスト5を上げると2006年度はバヌアツ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ国、パナマ、2009年度はコスタリカ、ドミニカ共和国、ジャマイカ、グアテマラ、パナマである。日本は両年度、95位、75位と低く、アメリカは150位、114位とさらに低い。現在の金銭的豊かさとは別に、文明活動の「持続可能性」が将来的に幸福度の重要課題となる。

  わが家では残暑の部屋で、設定温度を下げてエアコンをかけ、扇風機を回す。外は30度超の真夏日。中は快適な涼しさ。もったいない電力使用状況である。日本は医療、教育、交通手段、工業生産などはほぼ十分に発達している。しかし住居、食糧生産などは貧弱で、国民所得の格差は大きい。戦後67年の間に、戦後復興、所得倍増、高度経済成長、一億総中流意識など、右肩上がりの経済が続いた後、現在の長期不況、いじめ、孤独死など物心両面の貧困は深刻である。

  シリアでは内戦が悪化の一途をたどる。政府軍、反政府軍、それに加勢する外国からの私兵、傭兵が相争う。兵士も民間人も殺され、女性、子ども、老人は避難民として周辺国に逃れる。国連から派遣されたシリア監視団も最近撤退した。政治的主張を通すために武力に訴えると一方が降伏するまで、殺りくと破壊が繰り返される。

  日本の内戦といえば、源平合戦、奥州と京、鎌倉の争い、戦国時代、戊辰戦争、などが思い浮かぶ。外国との戦いは日清、日露、日中、太平洋戦争などがあった。戦争による殺人は敗戦国にとっては犯罪だが、戦勝国にとっては正義である。力は正義なり、正義は勝利なり、を目指して、国や軍隊が必死に戦う。日本はその道にまた迷い込むべきではないし、引き込まれない努力も払わなければならない。その道が対話と協調の追求である。

  その上で、持続可能な文明活動、「地球幸福度指数」が浮上する。産業発展のためにおびただしい汚染、公害が引き起こされた。日本では最初の原子力発電所が運転を開始して約半世紀で取り返しがつかない事故を起こした。将来も原発を継続するかどうか、先進国の一員たる日本も真剣に考えなければならない。従来の生産力と年間所得の有効活用と有効配分などを目指し、これまでの浪費生活方法の反省の上に立って、持続可能な幸福とはなにかを考え直していかなければならない。
  (岩手大学名誉教授・元放送大学客員教授) 


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