盛岡タイムス Web News 2012年 9月 17日 (月)

       

■ 〈幸遊記〉89 照井顕 西田耕三の気仙沼大島の記録

 宮城県気仙沼市を流れる大川の河口あたり、内の脇という所で「耕風社」という、地方出版社を営みながら、数百冊を数えた本の出版。自らの著書も120冊余りを出版していた、ノンフィクション作家・西田耕三さん(79)と、久し振りに電話で話をした。

  今彼は、山形の鶴岡市にて古い一軒家に、奥さんと二人避難生活をしているという。かつての気仙沼の家は津波にあい、過去の全てを失ったけれど、人気レストラン「アルケッチャーノ」のシェフとして働いている息子さんのいる鶴岡にて、孫の子守をしていると。

  そうは言え、今年(2012年)3月にはもう、東京の彩流社から「気仙沼大島の記憶」という、詩人・水上不二(本名・佐蔵・1894〜1965)の人と作品を出版した。この本は、2007年4月〜2009年4月まで、270回にわたって河北新報気仙沼版に連載した作品を補訂してまとめたもの。その素早さには、それこそ、作家という者の不二(?)身さを、見せつけられた思いがした。

  彼には、僕も昔日に「ジョニーのらくがき帳」「日本ジャズ専門店」「陸前高田ジョニー」などの本を出版して頂いたことが頭をよぎる。本とはいえ、あちこちに書き散らしたさまざまな僕のエッセーを、彼がもう一度、原稿用紙に、万年筆にてリライト、それをタイピストに打たせて編集し、印刷所に持ち込むという方法だった。

  今にして思えば、気の遠くなるような手作業を、ずっと、やっていたのでした。その根気こそが、彼の原動力であり推進力、考察力の素(もと)であるのだと気付かされる。

  彼にとって新しい土地である山形でも、すでに庄内日報紙に「月山」で知られる、今年生誕百周年の芥川賞作家・森敦(1912〜89)の作品を読み解くアンソロジー「私の私的リテラシー」を連載中である。「脳のレッスン」と笑う彼だが、庄内地方と気仙沼地方の交流の橋渡し役も買って出、今年は、そのブナの自然林に囲まれた月山湖畔に、気仙沼八幡太鼓の子供達を呼び、野外でのまつりを行ったと言うし、10月には、気仙沼の水産物を紹介するサンマまつりや、もどりガツオを食べる会なども企画していると、心技体の三つを耕す名の如く、衰えず、ますます盛んな様子である。
      (開運橋のジョニー店主)


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