盛岡タイムス Web News 2012年 9月 18日 (火)

       

■ 〈あなたへの手紙〉照井良平 夏の旅

 

この焼けるような夏
どこかへ そう
海とか 涼を見つけることが出来ましたか
…おっしゃるとおり
身体が 心も変にどこかヨロヨロしましたので
イカン と里山に逃げましたら
ホホウっと
偶然 風のそよ吹くブナ林の中を旅する
幸運に恵まれまして…

カンカン蝉が小耳を打って
アゲハチョウがヒラヒラ イトトンボも
緑の小径をチョロチョロ進めば
突然 褐色のせせらぎが現れて
ひやっとする水色が ツブツブの汗を吸い取り
絶景は なんと彫りの深い木漏れ日の
燐光でした

近くに若夫婦が住んでいて
穴の空いた若菜に 笑顔がたわいなく語りかけ
かたくなまでに無農薬栽培を
誇りにしていました
 
間を置いた
控え目な おもむろに出た次の話題は
葛家の漆黒に光る
5回塗りの階段の分厚いけやきの板と
異常な夏の暑さでしたが
その一つの原因は
地球を痛めつけ
大気を破壊
風の道・雲の道を破滅しつづけているからだと
青い空をグイグイ指差しながら
語気を強めておりました

風にふむふむと頷く
ブナの小枝の揺れを見ながら
久方ぶりに 辛味のある重い言葉を聞いた
味のある 偶然の
夏の旅でした



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