盛岡タイムス Web News 2012年 9月 25日 (火)

       

■ 〈あなたへの手紙〉 藤野なほ子 はまなす

 

 はまなすの花が咲いた
  日照り続きの中
  たった一輪
  新しい顔でこっちを向いている
  ひっそりとばらの香りを漂わせて

 夏は居座り続け
  まだ燃える まだ足りないと
  エネルギーを辺りかまわず振りまく
  雨はなかなか降らない
  早くも黄ばみかけた葉や病葉が
  なすこともなく風に翻える
  夜になってひそやかに虫は鳴いても

 はまなすの茎は
  ぎざぎざの刺で素手ではさわれない
  それぞれの鉢の中で枝はこみあい
  鉢の底からはみ出した枝が根付いて
  たくましく のびているのもある
  たっぷりと 水をやる

 初夏 それぞれに花開いていった
  ピンクの濃いのや うすい色など
  やがて赤い実が緑の中で陽を浴びる
  そんな時期でも なお追いつこうと
  花を咲かせていた…律儀さ

 二百十日は過ぎ 秋祭りが過ぎても
  なお陽ざしは強い
  根を弱らせたくないと水かけは続く

 はまなすの花は
  野生のままに ただ一輪
  秋に向かって立っていた


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