盛岡タイムス Web News 2012年 10月6日 (土)

       

■ 〈古都の鐘〉53 チャペック・鈴木理恵 ステンドグラス巡り

     
   
     

 9月の声を聞いて、遅い夏休みを取った。行き先はイギリス。旅の前半はレンタカーを借りて湖水地方へ、後半はロンドンへ。私たち夫婦二人ともステンドグラス、なかでも19世紀後半から20世紀にかけて、ウィリアム・モリスらの制作したものに興味があるので、それを見るのが主な目的。10日間で40余りの教会を訪ねた。

  お目当ての場所に目星をつけて、効率良いルートを決める。ナビゲーターは持っていないから、現地で詳しい地図を買って、それを見ながら回って行く。思ったより道が険しかったり細かったりで、運転担当の夫がぶうぶう言うのをなだめながら走らせる。せっかく着いたというのに、昨今の治安の悪化のせいなのか、人手不足なのか、開いていない教会もいくつかあった。それは残念であったが、知らない所を人に尋ね尋ね探すのにも骨折りながら、思いがけない美しい風景に出合えたりと楽しかった。また近所の人が鍵を持っていると分かり、訪ねて教会を開けてもらうというのもあった。

  山間の小さな村の教会など、私たちのほか誰もいないこともある。ロンドンの街中でも、教会の中は外の喧噪(けんそう)がうそのように静かなものだ。静寂の中に座っていると、日の光の加減によってステンドグラスの輝きが驚くほど変化する。自然と芸術が相まって眩(まばゆ)い美をこちらに見せてくれる。そこは大いなるものに向き合う場であって、わたしも外界から立ち返って静けさを取り戻す。

  プディングの味は食べてみなければ分からない、芸術もしかり。それでも写真でいくつかお見せしたい。
(ピアニスト)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします