盛岡タイムス Web News 2012年 10月 16日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉159 及川彩子 イタリア版敬老の日

     
   
     

 アルプス裾野の山々も紅葉が始まりました。イタリアには、紅葉を愛でる習慣はありませんが、街を歩くと、あちこちの古壁に絡まる真っ赤なツタが、目に鮮やかです。

  そして、私の住むアジアゴも、実りの季節。

  各地から、一番絞りのオリーブオイル、キノコのポルチーニやトリュフなどの収穫祭の話題が聞こえてきます。中でも一番人気は、「マロナータ」と呼ばれる焼き栗祭り。イタリアは、栗の名産地として知られます。

  先日、私が音楽の授業を担当する幼稚園でもマロナータが行われました。朝早くから、何十`もの焼き栗準備に大わらわ。栗がはじけ飛ばないよう皮に切り込みを入れ、ドラム缶の炭火で豪快に焼き上げるのです〔写真〕。

  この祭りに招待されるのは、園児の祖父母だけ。イタリアに「敬老の日」の祝日はありませんが、この日のマロナータは、まさに敬老の日。3歳から5歳までの園児100人余りによる学芸会の後、祖父母と一緒に焼き栗を頬張るのです。

  日本同様、高年齢化が進むイタリアでは、公共の滞在型介護施設の数も、利用者も少なく、介護の中心は「家族」。このため、介護者のストレスが「第二の犠牲者」を生むと危惧されています。

  また、「イタリアの老人は働き者」との興味深い報告も、近年発表されました。仏・独・英国の老人の平均労働時間が一日6時間に対し、イタリアは何と10時間。掃除・買い物・戸外活動…の内訳では、孫の世話・学校の送り迎えに4時間余り費やされていると言うのです。

  家族の連帯感で救われる社会構造。近年は、経験豊かな老人を「知的資源」とする、イタリアの今後の対策に注目です。

  日頃の感謝の意を込めたマロナータで、働き者のおじいちゃんとおばあちゃんに抱かれて栗を頬張る園児たち。祖父母に手を引かれて歩いた幼い頃が、思い出されるのでした。


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