盛岡タイムス Web News 2012年 11月 13日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉161 及川彩子 女性ゴンドリエーラ

     
   
     

 水の都ベネチアは、無数の橋と運河からなる、世界でも類を見ない干潟の街。車を乗り入れることが出来ないベネチアの交通手段は、徒歩か水上バス、渡し舟、ゴンドラ〔写真〕などを利用しなければなりません。

  中でも目を引くのが、優雅な漆黒のゴンドラ。11世紀生まれのゴンドラは、イタリア語の「揺れる」の意味。かつては、色も装飾もさまざまで、ぜいを尽くした貴族の乗り物でしたが、ベネチア帝国の衰退とともに、すべて黒塗りに統一。次第に、市民の公共的交通手段としても欠かせないものになったのです。

  ここアジアゴのわが家から、ベネチアまで車で1時間半。先日、所用で訪れた際、広場の大駐車場に車を預け、運河沿いの小路を歩いていると「ゴンドラ!ゴンドラ!」の誘い声に引かれ、数年ぶりに乗りました。

  気のいいゴンドリエーラ(船頭)のマルコさんに、最近のベネチア情報を聞くと、数年前、女性のゴンドリエーラが誕生、900年もの歴史が塗り替えられたとのこと。

  ゴンドリエーラになるには、クラブチームで修業の後、操作技術・歴史・語学などの試験があり、採用されるのは年に10数人程度。何より重要視されるのが世襲。その女性も代々ゴンドリエーラが家業で、幼い頃から父親と一緒にこいでいたのだそうです。

  イタリアは、学歴や自由競争より「親の七光りとコネ・世襲社会」。それは大企業発展より、家族単位の中小企業を大切にするゆえんでもあります。

  さまざまな分野に女性進出が目立つ昨今、イタリアの割合は、世界各国に比べて多く、日本の約3倍。それも世襲制である場合がほとんどと聞きました。

「運河の濃い霧や雨にかかわらず、一日中波上の仕事は体力勝負だからねえ」と、女性ゴンドリエーラに不安そうなマルコさん。でも、新たな社会の風が古都ベネチアにも吹いているのかもしれません。


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