盛岡タイムス Web News 2012年 11月 14日 (水)

       

■  福祉と文化に懸ける橋 志賀かう子さん福祉施設館長に 馬場さんと賢治の理想継ぐ

     
  なごやかハウスの館長に就任した志賀さん  
  なごやかハウスの館長に就任した志賀さん
 

 エッセイストの志賀かう子さん(77)が10月から、盛岡市のいきいき牧場指定共同生活援助・介護事業所なごやかハウスの「つしだハウス」(盛岡市津志田西1丁目)館長に就任した。志賀さんは2001年に同市の深沢紅子野の花美術館館長を退任後、宇都宮市に移った。帰郷して故・馬場勝彦氏の遺志を継ぎ、盛岡市で福祉の現場に乗り出した。ハウスには障害者が暮らし、志賀さんの理念で運営する。館長としての決意を聞いた。

  ―福祉に転じたきっかけは。

  志賀 これまでは裾野の協力で積極的でなかったが、馬場さんの考えに敬服していた。「風と行き来し、雲からエネルギーをとれ」という(宮沢賢治の)「農民芸術概論」の言葉が、馬場さんの人生の標語になっていた。
  馬場さんの言葉を読むと、能率やお金で価値を計る社会ではどうしても幸せを求めることは難しく、いつもはみ出している人がいる。やがては誰も老いて体が動かなくなる。それなら違う物差しで幸せを計る、もう一つの社会をつくってみようと。優しさや思いやり、汗して働いて得る暮らしの糧、障害者、老人、大人、子どもが喜びをもって暮らす、土に根差した健康な生活共同体をじっくり築き上げたいと書いている。生涯を懸けた思想を現実にしたのが馬場さんだ。
  「3・11」があり、賢治はすぐ目の上に仰ぎ見て生きなければと思う人物になり、馬場さんのことがさまざま思い出されていた。そのとき、いきいき牧場・のびやか丸施設長の岩根多喜男さんから館長就任の話をもらった。私の最後の決断として、やらせてもらいたいと思った。
  私が障害者と一緒に寝起きすることで、最も身近なところから、彼らの日々を知る者としての発信ができるのではという示唆もあった。外から分からないことに日々接していることにより、別の発信ができるのではないかと思う。地域社会の人に新しい視野を広げてもらう小さなきっかけをつくりたい。

  ―馬場さん、賢治の精神をどのように生かすか。 

  志賀 馬場さんは賢治を一生懸命読んだ人。私も賢治を読みながら、馬場さんの域に達することはできなくても、賢治が残した人生観、馬場さんが目指した世界に皆が少しでも近づくため道案内できたらいい。大事な物事は世代で伝えていくことで、実りに近づいていかねばならない。

  ―どのような施設運営を。

  志賀 いくつかあるグループホームのうちつしだハウスが一番新しい。他と違う特性を持ったグループホーム。高齢者の施設で、他の施設は社会復帰に向けてのステップハウス。私たちもステップハウスとは思っているが、年齢的には社会に戻るのが難しい人たち。年寄りたちだけの「ついの住み家」という認識はなかった。この人たちが社会に出ていけるかという、ぼんやりした考えがあるだけだった。ある人は言語が不明瞭で、しゃべっていることをはっきり聞けない。近くに寄って聞くと、「俺は夢も希望もない」とつぶやく。
  絵心でも、彼らに面白かったというものが何かあるはず。面白いというものを、探してあげることができたらいい。内部にあって感じることを皆さんに伝え、共に考えていく小さな発信源にはなれるよう、文章でもお手伝いできたらいい。今、一緒にいる女性の世話人さんたちは、彼らの気心が分かり、中に深く入っている。ご飯も作っていろんな世話をしている。
  私は新参者だが、私なりの視点で見たり考えたりしていきたい。


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