盛岡タイムス Web News 2012年 11月 21日 (水)

       

■  〈日々つれづれ〉148 三浦勲夫 情報の秘匿・暴露・検証

 偽情報で金を得ようとするのが「振り込め詐欺」だ。銀行のATM機の画面は「振り込め詐欺に注意」と利用者に注意を喚起する。今度は「なりすまし」犯人が捜査陣に挑戦している。「なりすまされた」2名の人が濡れ衣を晴らすのに苦労し、捜査陣は不適切捜査と誤認逮捕を被害者にわびた。真犯人の居場所、身柄を特定する捜査努力が注目される。

  社会的事件あるいは事実が発生する。それを伝えようとする者、秘匿しようとする者、情報を求める者がある。個人情報でもだいたい同じことが言える。不都合、不名誉な真実は隠される。それを伝えれば基本的人権や名誉の侵害で訴えられ、謝罪を求められる。橋下徹大阪市長の出自に関する情報発行で「週刊朝日」(朝日新聞出版)が本人から糾弾され本人に丁重にわびた。これに関する賛否もネットには掲載されている。

  報道手段には、公的報道機関である新聞、雑誌、放送などが一方にあり、他方には主に私人が中心となるツイッター、フェースブック、ブログなどのネット情報がある。組織や個人の情報は、秘匿されても、容易に公表されたり、暴露されたりする。アメリカCIAや軍部高官のスキャンダルも明るみに出され、世界を駆け巡った。犯罪者にも「黙秘権」はあるが、情報の捜査権や開示要求権もある。

  コンピューターや携帯通信機が大衆化して、情報の氾濫は一気に拡大した。不都合な真実は隠ぺいされたり、暴露されたり、消去されたりする。情報の海に浮かぶ人間は虚偽の情報に流される危険性が常にある。流されないためには「情報の検証」に当たらねばならない。それにはある程度の時間が必要である。いいかえれば「批判精神」である。

  早い情報には価値がある。しかし誤った情報は無価値である。速さの魅力に取りつかれるのは古今の通則だが、誤謬(ごびゅう)の無価値に陥る危険性もある。そのはざまで揺れ動くのが情報時代の現実である。情報の海は一般民衆をその中に浮かべて運ぶ。そこにはさまざまな潮の流れがあり、嵐や津波も襲ってくる。情報を見極める客観的な目が必要である。

  メディアには正しい事実を社会に伝え、事実に基づいた分析をおこなう責任がある。分析は一つだけではない。情報の受け手も与えられる情報を比較・検証して妥当な個人見解を作ることを求められる。価値観は多様であって、最大多数の最大幸福もあり、少数意見への配慮もある。自己中心的ないし党利党略中心ならば極端に「内向き」な価値観となる。自分と他者、自国と他国、世界の利害の調整も行うならば「外向き」な価値観となる。その上で実行力が求められる。

  衆議院は11月16日に解散された。総選挙は12月4日に公示され、同月16日に投開票される。国内では激しい政権の争奪選挙となる。国際的、外交的には中国、韓国との領土問題が粘り強く冷静かつ果断な解決を求められる。経済的にはTPP参加あるいは不参加が産業界によって判断が分かれる。

  選挙戦を通してどれだけ政治課題に対する認識が深められるだろうか。論議に耐え、長期的展望を持ち、長期的基盤に立ち、強い指導力を発揮する勢力が育つことを国民は期待している。(岩手大学名誉教授・元放送大学客員教授)


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