盛岡タイムス Web News 2012年 11月 27日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉162 及川彩子 ヴェルディの家

     
   
     

 先日、ミラノ領事館と北イタリア日本人会主催による音楽会「コンチェルト・デッラ・アミチーツィア」がミラノで開かれました。イタリア語の「アミチーツィア」は「友情」の意味。音楽を通じ、日伊の交流を深めようと、毎秋開催されているのです。

  会場は、世界でただ一つ、音楽家のための養老院として知られる「ヴェルディの家」。ヴェルディは1800年代の作曲家で、「アイーダ」、「椿姫」、「オテロ」など数々のオペラ作品で知られます。その晩年、音楽家仲間の最期を憂い、私財を投じて建設したのです。

  ミラノ郊外の閑静な住宅地に、堂々と構えるれんが建てのヴェルディの家には、100人近くを収容する老人施設、コンサートホール、誰でも気軽に使える練習室、中庭には、モザイク装飾が施されたヴェルディの霊廟もあります。

  長年の間、維持管理は、ヴェルディの著作権で賄われ、かの有名なピアニスト、ホロヴィッツも多額の寄付をしたと言われます。まさに音楽家ための安息の場。

  ヴェルディの肖像画が見守るアンティークなホールは、音楽を志す者にとっては憧れの会場。どのオペラハウスよりも特別な舞台なのです。

  今年の出演は、ここ本場イタリアの舞台に立つ日本人オペラ歌手やミラノ・スカラ座オーケストラのバイオリニスト、留学生、それにイタリア人音楽家も交じり、ヴェルディのオペラアリアや、器楽アンサンブルなどを楽しませてくれました〔写真〕。

  200人程で超満員のホールには、施設の老人たちも車椅子でずらり。眠ったようなしぐさも、演奏が始まったとたん顔を上げ、目を見開き、耳を傾け、口ずさみ、最後にはブラボー!と歓声を上げるのでした。

  遠い国の若き音楽家に向けられる温かなまなざし。イタリアと日本の懸け橋が、ヴェルディによって結ばれているのでした。


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