盛岡タイムス Web News 2012年 12月 5日 (水)

       

■  〈日々つれづれ〉150 三浦勲夫 峠は別世界

 11月27日。北日本は風雪で登別、室蘭の送電線鉄塔が倒壊、停電被害が大きかった。岩手県一帯も激しい雪だった。雪はいったんやんだがまた降りだした。予報では午後から晴れるというので、思い切って車で出発した。目的地は二戸市のシビックセンターである。

  そこでの英語学習会には雪がやんだ後、4人の会員が集まった。主婦ばかりである。車で30分の道を浄法寺から運転してきた人もいる。会員の中には一戸、軽米、九戸から来る人たちもいる。どの会でも共通するが、この会では特に女性パワーが強い。

  無事に盛岡から往復運転したが道中は緊張した。片道に2時間弱かかる。途中、岩手町・沼宮内の道の駅で小休止しないと神経が疲れる。休みながら「あと一時間」と自分を励ます。その日は広い駐車場に雪がうっすらと積もっていた。「雪積もる道の駅にて休み取る会場二戸へあと一時間」

  緩やかな登り道に差し掛かる。奥中山の海抜458bに向かう。雪が激しくなり、峠の上では左から右へ、西から東へ、強い風が吹く。雪煙が長く尾を引く。緊張感が増す。「吹きつけて視界さえぎる雪煙奥中山の国道険し」。ここには福祉施設などがいくつかある。夏は涼しいが冬は厳しい。行きかうトラックが多い。しかし頂上部分はすぐに下り道となる。これがまた怖い。だが幸いこの部分で雪はやみ、日が差し込む。「風雪の峠越えれば日差しあり一戸二戸車内ぬくもる」。「峠は別世界」と言われるゆえんか。

  小鳥谷(こづや)、小繋を過ぎる。ここを通ると、肺結核でサナトリウムに療養した友人を見舞った高校時代を思い出す。「一戸のサナトリウムに友見舞う汽車で行きしは高3の夏」。彼は学年が1年遅れたがその後退所し、名門大学に進学した。しかしあれから音信不通である。同期の集まりでも会わない。

  二戸市に到着。会場はシビックセンター2階の和室である。洋室は先約があった。しかし畳と座布団で雰囲気がくつろぐ。学習会では英語の合間に、日本語や笑い声が飛び交う。神奈川県出身で岩手・浄法寺で初めて農業に取り組む人もいる。英語発表にもそれぞれの生活ぶりがのぞく。この人は「野菜の収穫と漬物作り」を話し、他の人たちは「水泳と編み物」「海底の地形」「缶コーヒーで当てた腕時計」が話題だった。英語の話、日本語での感想、笑いが起こる。「集い来る主婦ら英語を学び合う和室の窓に冬日あかるし」

  12月から3月まで学習会は休会し、その間は自分でテレビ、ラジオ、インターネットなどで学習していただく。ただ、冬休み中は列車かバスで行けるかもしれない。他人とともに学べば張り合いがつくという。一人学習は長続きさせるのが困難らしい。

  会は帰り道の安全を考えていつもより30分早く終わった。座卓を片付け、テレビ、DVDプレーヤーなどの小道具を皆さんが私の車まで運んでくれた。まだ1カ月早いが「良いお年を」とあいさつし合う。3時45分に出発。奥中山の頂上はまだ明るかったが「マイナス3度」「凍結注意」の表示だ。1時間後、中間点の沼宮内「道の駅」で休む。小雪が舞い、積雪が少々増えていた。休憩後、本格的に暗くなった道を注意して運転。1年前には迷った玉山の道も今は迷わず無事帰宅した。
(岩手大学名誉教授・元放送大学客員教授)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします