盛岡タイムス Web News 2012年 12月 19日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉312 伊藤幸子 小沢昭一的こころ

 その場しのぎに生きてきてまた師走
                         変哲

  年もおしつまってから聞く訃報はひとしお寂しい。12月10日、俳優・エッセイストの小沢昭一さんが83歳で亡くなられた。私はTBSラジオの「小沢昭一的こころ」が大好きで40年来聞いてきたが先月あたりから過去の収録ものが流れるようになり気になっていた。

  著書もいっぱいあるが平成14年刊「散りぎわの花」には年末の過密な仕事ぶりが書かれてある。「若いころから仕事はたくさんきたので、子供ができてからも朝昼晩働いて徹夜で仕事して、撮影所やラジオ局のロビーで仮眠して、また朝の番組なんていう生活でした。大晦日の夜に帰りゃいいのに、俺たちには除夜の鐘なんて関係ないと突っ張って、西村晃さんと夜通し話してたりしました…」
  また平成3年刊の「もうひと花」にはコンビニの話で笑った。今から20年も前のころ、まだ「コンビニエンス・ストア」なるものが珍しかったころのこと。小沢さんはこの新商店が大好き。「今さっき、かの店でスポーツ新聞と武田鉄矢印のキツネうどんと焼きそばを買ってきました。コンビニエンス・ストア略してコンストは、私にとって一銭もらって駄菓子屋にとびこんだ子供時分の風景なんです。アッ、〈パンスト〉っていいますから〈コンスト〉っていう略称あってもよろしいでしょう!」そういえば盛岡では「ローソン」出店が早かったからしばらくコンビニ総称のように使われていたようだ。でも「コンスト」ってやっぱりおかしい。

  昭和4年巳年生まれの氏の「二〇〇一年元旦」の章。「遙かなる次の巳年や初み空」「これはタウン誌『うえの』に本年巳年生まれの句として載せてもらったもの。おそらく次の巳年には永の眠りに入っているだろう。それでよい」この時はまだ72歳の現役年男でいらした。

  小沢さんは俳人・変哲としても有名で「天は二物を与えずといいますが小沢さんの場合、役者であり俳人であるだけでなく、放浪芸の研究者であり、歌手としてCDもたくさん出し、もの書きを加えると天は数えきれないほどのものを与えている」とは辰濃和男さんの解説。「椎の実の降る夜少年倶楽部かな」を絶賛される。「背で囲み背で話し合う焚き火かな」「凩(こがらし)や芸の渡世の幸不幸」も私の大好きな句。東京やなぎ句会の方々との論談風景も覗いてみたい思いにかられる。「その場しのぎに」生きている日々、「またあしたのココロだー」と、ラジオの声にあしたもあさっても元気をもらいたかった。 
    (八幡平市、歌人)


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