盛岡タイムス Web News 2012年 12月 26日 (水)

       

■  〈日々つれづれ〉153 三浦勲夫 冬を越す

 雪が何度か降っては解けていたが、日陰では根雪となった。寒さが大地にしみ込んでくる。毎朝早くからの犬の散歩も一苦労だ。ある大雪が降った日の朝、散歩に出ようとして玄関を開けると、降りしきる雪の中で電線に止まったカラスが2、3羽鳴いていた。哀れを誘った。それに引き換え犬は幸せだと思ったが、これまた裸足である。その足で犬も雪を踏んでいつものコースを一回りした。

  盛岡市内のカラスの行動を大学関係者らが追跡調査し始めたというニュースを見た。捕獲した数羽のカラスにGPS(全地球位置把握システム)をつけて、放鳥していた。研究室のモニターでカラスらの飛ぶコースを追って分かったことは、カラスは40`余り離れた所まで飛ぶ。農場などの飼料を食べているらしい。厳しい冬、自然の食物は乏しい、ごみ集積所もネットなどでごみをカラスから守る。しかしカラスは遠くまで移動して食料を得る。農場などでは家畜の飼料に蓋(ふた)をしてほしいということだった。

  カラスも十分な食物を得られなければ冬に死ぬという。食物探しは必死である。カラスのほかの生き物はどうだろうか。白鳥は南に渡って川や湖で冬を越す。熊やリスは冬眠する。生物それぞれに越冬習慣を持つ。しかし開発が進めば、これらの動物も十分な食料を食べて越冬や冬眠を行うことができない。

  人間は裸では冬は越せないから、衣食住の工夫で「雨にも負けず風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けぬ」知恵をつけてきた。ここでヒトの進化のあらましを調べてみた。「猿人」(アウストラロピテカス・アフリカ中東部)が400万〜300万年前に出現した。180万年前に「原人」(北京原人やジャワ原人)が出現し、50万〜30万年前に「旧人」(ネアンデルタール人)、そして20万年前に「新人」(クロマニヨン人や上洞人)が出現して洞窟絵画を残している。

  ヒトは直立歩行をして、自由に使えるようになった手で道具を作り、かつ脳を発達させた。火を利用して洞窟に住み、寒さをしのぎ、料理し、野獣から身を守り、石器で狩猟も行った。60万年ほど前から地球は氷河期に入り、各種生物は寒さに適応させられた。50万年ほど前にヒトは火を使い始めた、という。

  また直立歩行をすることにより、ヒトは喉の咽頭から喉頭部分の距離が伸び、かつ声帯を開閉したり、他の発音器官を使ったりすることにより、母音や子音を発音することが可能になった。それで人間は言葉を持つようになったという。乳児がやがて立って歩くようになると、やはり咽頭から喉頭にかけての距離が伸びて言葉が話せるようになるそうだ。

  原始時代、ヒトだけでなく他の動植物も氷河時代を生き延び、あるいはその後に進化した。それが現在の生物多様性を作り上げた。いまさらながら、みな、よく生き延びたと言う実感がする。その間、絶滅したものもあれば絶滅危惧種になっているものもあるが、生きとし生けるもの、ある意味では、みな大事な仲間である。

  これからまた冷え込みが予想される。冬の入浴は寒い浴室が危険である。室内を温め、ぬるめの湯で体を洗ってから徐々に熱い湯に入る。急激な温度差は危険である。
  (岩手大学名誉教授・元放送大学客員教授)


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