盛岡タイムス Web News 2013年  1月  9日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉315 伊藤幸子 箱根駅伝

 遙かより小旗のゆれの移りきて今駅伝の五位走り去る
                                    小澤光恵
                        「角川現代短歌集成」より。

  1月2、3日、第89回箱根駅伝が開催された。第1日は東京大手町から神奈川芦ノ湖までの往路5区間108・0`に20チームが参加。毎年恒例の正月駅伝、私はことしは例年より集中してテレビ桟敷を楽しんだ。

  結果のみ言うならば、往路を制した日体大が首位を譲らず、合計タイム11時間13分26秒で30年ぶり、10度目の総合優勝を果たした。1987年に箱根駅伝のテレビ中継が始まったというが、正月三が日に放映される華やかさが、ご年始客の出入りする家庭の茶の間にすっかりとけこんで今や初春風物詩となっている。

  私はそんな中でも5区の小田原│箱根間のコースが好きでたまらない。スタートで注目を集める1区、2区は鶴見から戸塚。3区は海岸線を走り、たえず風向きに左右される。今回は二日間とも強風に悩まされたようだ。

  毎年テレビで見ていると、耳になじみの地名もなつかしい。花の2区の「権太坂(ごんたざか)」は1・5`もの上り坂。今、平和なこの道をその昔は甲冑(かっちゅう)に身を固めた板東武者たちが走ったかと、そんな歴史も偲ばせる道。時折ヘリコプターからの空撮で美しい湘南海岸が見える。津波も雪もなく、白い波がしらがのどかだ。相模湾って広大だなあと画面に見入る。

  1月3日午前8時、私は箱根駅伝復路のスタート地点を見つめた。3・1度、雪はない。芦ノ湖で号砲。前日トップの日体大がスタート、2分35秒差で早稲田が続く。前日のひたすら上りの標高600bを今日は下らなければならない。カーブが多い。うちの方の松川温泉から八幡平へ向かうルートと似ているのではないかと思う。歩くさえ大変なのに選手たちはたえず時間と体力と気力との真剣勝負だ。

  標高600bの「小涌園」が見える。国道1号の最高地点は標高874b。5区20・7`の間には東京都庁の3倍もの標高差があるという。

  そして「函嶺洞門(かんれいどうもん)」のトンネル。これもテレビで見るたびに、いつか訪ねてみたいと願ってきた。川に面したトンネルはスノーシェルターにも似たまだらな日の影が躍っている。そこも鳥のようにかけぬける選手たち。

  5区を制すれば箱根を制すとの伝説通り、ことしは日体大がみごと優勝に輝いた。どの大学にもドラマがある。大手町のゴールにかけこんでくる選手たちと一緒に、私は二日にわたって山越えをしたような快い疲労感に包まれた。
(八幡平市、歌人)
  


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