盛岡タイムス Web News 2013年  2月  5日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉167 及川彩子 伊ブランドの支え

     
   
     

 イタリア土産と言えば、ワイン・オリーブ油・生ハムなどの食材やファッション製品、ベネチアグラスなどさまざまですが、筆頭は靴・鞄などの革製品。

  グッチやフェラガモなどの有名ブランドも多く、先進国サミットの際には、各国首相の記念品としても選ばれています。

  イタリア皮革の特徴は、伝統的「なめし手法」。化学薬品ではなく、草木のタンニン(渋)を使い、何十もの工程と時間をかけて作るのだそうです。その「タンニンなめし」によって、革はあめ色、使い込むほどになじみ、傷さえも製品の個性に変わるのです。

  そして仕上げは、イタリアならではの発色とデザイン。この華やかな産業を支えているのが、アルバニア、南ロシア、アフリカからの移民労働者です。

  動物の皮を剥ぎ、外とうや履物に利用し始めたのは先史時代。以来、生活必需品として、技術の試行錯誤が繰り返されました。けれども時代が下るに従い、皮なめし職人は、貧民層として差別されてきました。

  かつてヨーロッパの皮剥ぎ職人は、供物を捧げる司祭も兼ねていましたが、キリスト教の浸透とともに動物呪術信仰が衰退し、貧民層に逆転。残念なことに、今もその慣習が残っているのです。

  以前、イタリアに「なめし皮」を輸出しているモロッコの職人街を訪ねたことがあります。サハラと地中海を結ぶ街道の古都マラケッシュの街外れの特別区に、ガイドの案内で一歩足を踏み入れると、鼻を突く異臭…。

  洗い場のようなコンクリートの処理場で、職人たちが皮を石灰に浸し、臭い消しの鳩のフンを入れてもみ洗いし、干し、また洗う作業を繰り返していました〔写真〕。とても強烈な印象でした。

  エレガントな靴や鞄、人気の皮ジャンに生まれ変わる「なめし皮」。社会の光と陰…長い歴史と人の営みへの興味は尽きません。


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