盛岡タイムス Web News 2013年  2月 14日 (木)

       

■  〈上海〜NY〜台湾ひと筆書き〉4 沢村澄子 ユアウエルカム

 初めて乗った中国系航空の飛行機内は、見渡す限りの中国人。日本人も交じっているのだろうが、外見での分別が難しい。このわたしも、日本人乗務員から中国語で話しかけられた。

  上海からNY(ニューヨーク)までは14時間ほどのフライトで、確かに身体もくたびれ、エコノミー症候群の恐れもある。しかし驚いたのは、中国人たちがこぞって立ち上がり、機内を公園か広場のごとくに体操を始めたことだ。太極拳もあるかと固唾をのんだがそれはなく、しかし、どんなに長いフライトでも、ヨーロッパや日本の飛行機では見られない光景だろう。体操が終わるや、今度は客室乗務員も加わっての雑談?が始まり、市場のような活気、喧騒(けんそう)となった。

  中国パワーにのみ込まれたまま、ケネディ空港に降りた。アメリカの入国審査には時間がかかる。次々に到着する飛行機から人があふれ、ここで一気に群れは多民族化し、髪や肌や目の色も取り取りに、さまざまな人種が審査を待つ列を成した。

  入国かなって、さて荷物を…と、広いフロアを見渡したとき、近くにいた空港スタッフに声を掛けられた。スーツケースの受け取り口を教えてくれる。「サンキュー」「ユアウエルカム」

  上海の空港では、こちらから質問するとか頼むとかしない限り、係員の方から何かに動いてくれるということはない。しかしNYでは、客の目が何かを求めてさ迷っただけで、すかさずスタッフのサポートが入る。それをサービスの徹底とかフレンドリーな気質によるものなどという人もあるだろうが、わたしはそこに、コミュニケーション能力の成熟というものを覚えた。

  多民族が入り乱れて暮らすNY。言語も宗教も価値も人も、本当にさまざまだ。その衝突や軋轢(あつれき)も複雑な歴史ではあったろうが、結果、そこで壊された壁、磨かれた感性、開放されてゆく人間、といったものもあったのではないか。中国や日本のわたしたちにはまだ、その辺りに青くさくて固いものが潜んでいる気がする。

  空港から地下鉄で約2時間。アポロシアターで有名な125番通り。ハーレムのアパートを目指した。
(盛岡市、書家・沢村澄子)


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