盛岡タイムス Web News 2013年  2月 18日 (月)

       

■ 〈続われらの時代〉17 和井内和夫 二戸小唄

 どこの県にも県民歌があるし市には市民歌がある。別にお役所製だからという先入観によるわけではないが、感銘あるいは感動を受けるというほどの名作はないようである。またこれはわたしだけのことかもしれないが、県や市の公式の行事などで歌われたのを聞いたことはない。

  その点、各地で歌い継がれている小唄≠ニか音頭≠ニかには郷愁をさそわれるものがある。これは二戸市かつての北福岡で歌われていたものである。

  春は折爪 山から明けて
  霞ほのぼの 九戸の城址
  末の松山 馬引き行けば
  桜花咲く 鳥も鳴く

 夏は湯田かよ 湯の香にくれて
  河鹿なくなく 馬淵の川原
  今宵逢瀬の 滝見の橋に
  源氏蛍も 逢いにくる

 秋は馬仙峡 人波寄せて
  紅葉てるてる 不動の滝よ
  そよろ稲庭 颪が吹けば
  五穀豊かな 穂が稔る

 冬は田山よ 奥中山よ
  雪は降る降る あの七時雨
  君と並んで スキーで行けば
  チラリ安比の 灯が招く

  昭和30年代の中頃、当時北福岡と言った二戸市で暮らしたことがあるが、その当時は宴会で何度か聞いたことがある。

  この唄にはいろいろと思い出させられることがあり、またつくづくと時代を感じさせるものがある。

  一番に出てくる「末の松山」は、一戸から北福岡への旧街道である馬淵川の東側の山中を通る浪打峠の頂上部のことで、その付近ではかつてそこが海の底であったことを示す水生物の化石が見られるので保護されているはずである。

  かつてはこの峠道に電電公社の地下ケーブルが埋設されていたので何度か巡回したことがあったが、四輪駆動車であればなんとか通ることができる程度の道であった。

  二番に出てくる「湯田」は言うまでもないが金田一温泉のことであるが、温泉としての知名度は低いが、岩手県内で初めて50bプールができたのはここである。今ではそのことを知っている人はあまりいないであろう。

  また今宵逢瀬の「滝見の橋」は青森県境近くなそうである。

  三番に出てくる「不動の滝」は今は八幡平市になった旧安代町の名勝地である。次の四番に出てくる「田山」や「七時雨峠」もそうだが、いずれも以前は北福岡や浄法寺と同じ二戸郡であった。

  またチラリと見える=u安比の灯」は、現在荒屋新町の町中にある新安比温泉のことではなく、馬淵川の支流である安比川の最上流部安比岳の麓にあった、まさに秘湯と言うべき湯宿安比温泉のことである。

  わたしのように古い人間にはなんとも懐かしい歌詞である。

  折爪・九戸の城址・馬仙峡そして奥中山などはとくに説明は要らないであろう。


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします