盛岡タイムス Web News 2013年  2月 19日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉168 及川彩子 操り人形の背景

     
   
     

 イタリアの街を歩いていると、工芸品やおもちゃ屋のショーウインドーに操り人形をよく見かけます。操り人形は一般的に「マリオネット」と呼ばれていますが、イタリア語では「マリオネッタ」。「小さなマリア様」の意味です。

  その起源は、エジプトの古代偶像に始まり、ギリシャ時代の人形スペタクル…とさかのぼりますが、庶民の玩具として広がった背景には、子どもの育て方にあると言われます。

  ヨチヨチ歩きの子どもの肩にひもを付け、親が上から引っ張り上げて歩かせたのが17〜18世紀。まさに操り人形の原型です。

  それを物語にしたのが、19世紀を代表するフィレンツェ生まれの童話作家コッローディ。「ピノキオの冒険」で、原題は「ある操り人形のお話」でした。

  ゼッペットじいさんが、丸太で作った人形のピノキオは、学校にも行かず逃げ回り、うそをつき、鼻が伸びるたびに妖精に助けられ、おもちゃの国で遊びほうけてロバにされますが、最後には勇気を出し、クジラに食べられたじいさんを助け出し、人間の子どもになる…この物語には、操り人形も「人間性を得てこそ一人前」というモラルが秘められているのです。

  歴史的にもさまざまな側面を持つ操り人形ですが、実際に糸を操るには技術が必要です。でも、幼い子どもでも、偶然の動作で思いがけない表情が生まれるのが大の魅力。その感覚が情操教育に役立つと、幼稚園の教材にも使われています〔写真〕。

  同じように、パンくずで遊ぶ知的障害の子の姿をヒントに手の感覚を鍛える木製玩具を開発したのが、19世紀の教育者マリア・モンテッソーリ。イタリア初の女性医学博士で、知的障害者の能力を、普通の子ども以上に引き上げたのです。

  世界に先駆けるイタリアの手工業製品。優れたデザイン感覚と技術、その支えには、こんな背景もあるのです。
 


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします