盛岡タイムス Web News 2013年  3月 1日 (金)

       

■  〈わが歳時記─3月〉 高橋爾郎

 弥生(やよい)3月、何かとこころ忙(せわ)しい季節である。入園、入学、進学、卒業、就職、転勤、退職など、幼稚園の子どもから、少年、青年、中年、熟年まで、哀歓交々の3月だ。新しい門出のヤングの皆さんには健康に留意して頑張っていただきたいと思う。長い勤務を終えられた高年の方々はご苦労さまでした。

  後期高齢者と呼ばれるようになったぼくにははるかだが、その折々の思い出は、今も甘酸っぱい回想となって、キュンと胸にしみるのだ。

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  先日、福田こうへいさんがNHK歌謡コンサートに出演し「南部?しぐれ」を歌った。こうへいさんは岩月(がんげつ)さんの子息だが、お父さんよりもすばらしい張りと艶のある美しい声だ。全国民謡コンクールで日本一に輝いたが、こんど演歌歌手としてデビューした。民謡できたえた声と技、何ともいえぬ哀愁をそそる情感が胸にしみる味で、ぼくは大ファンになった。

  6月12日には「岩手からいま伝えたい歌の力」をテーマに東京渋谷でファーストコンサートを開くという。千昌夫、新沼謙治につづく歌手として大きくはばたいてほしい。こころから声援を送っている。

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  ぼくは明日から一週間、猛烈に忙しくなる。毎月のことだが、短歌誌「長流」5月号の準備だ。師若山牧水、長谷川銀作の作品解説を5枚書き、送られてきた約1千首の選歌にかかる。体調を整え、気分を爽快にして室にこもる。この間、ぼくは留守にしている。

  歌材は実に多岐多彩である。日常の家庭生活、季節の風物、旅行、日本の政治、国際情勢などなど。今回は団十郎、大鵬の死を悼む歌。児童のいじめ、柔道の暴力問題、企業戦士のテロの犠牲の歌。ロシアの隕石落下の歌が多い。今に生きる人間のそれぞれの感懐をこめた歌だ。新しい用語や表現、ぼくの知らぬ言葉、横文字があり、選ぶぼくは全くぼんやりしておられない。毎日毎日が勉強である。辞書をかたわらに、ねじり鉢巻でうなり声をあげながら、いい歌を見逃がさず、しっかりと選びたいと思う。

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  わが知らぬ母の古唄ひなまつり  沢藤 柴星

  消しゴムの屑ちらばして大試験  伊藤 紫水

  耳曲げて深き帽子や入学児  清水不棲魚

  父よりも大き靴履き卒業す  武内千賀詩

  啓蟄(けいちつ)や窓口におく貸しめがね  小原 啄葉

(歌誌編集者)


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