盛岡タイムス Web News 2013年  3月 7日 (木)

       

■  〈上海〜NY〜台湾ひと筆書き〉7 沢村澄子 ハリケーン・サンディの町

     
  ハリケーン・サンディで破壊された店舗(クイーンズ・ロッカウェイビーチ)  
  ハリケーン・サンディで破壊された店舗(クイーンズ・ロッカウェイビーチ)
 

 ケネディ空港に着陸する時、旋回する機内から見た眼下の砂州になぜか気が引かれていた。それで、サンクスギビングで人がごった返す日にその人混みを避けて、空港近くにある野生生物保護区を目指した。

  ハーレムから地下鉄で2時間。ところが、途中でなにやら降りろと言われ、バスに乗せられしばらくしてまた電車に。駅が壊れている。この時点でようやく自分が行こうとしているエリアが10月末のハリケーン・サンディで破壊されていることを知った。地下鉄は水没してしまっていた。

  再び降ろされ、再度バスに乗せられたところで乗客はわずか数人。その中の一人から突然話しかけられた。

  「同じ理由でおいでですか?」。日本語なのに意味が分からない。当惑するわたしに、彼女は自分が国交省在籍の研究者であり、ハリケーン・サンディの被害調査に来ていると説明した。

  いや、野生動物を見に行こうとしていたと赤面しながら、盛岡から来たことを話すと、今度は3・11のその後どうなっているかと聞く。彼女本来の専門は津波で、スマトラ島沖地震以来の研究を生かせないまま、東北で多くの犠牲者を出してしまったことがつらいと語った。今回の出張は彼女にとって懺悔(ざんげ)の旅だという。

  車中、二人でいろんなことを話した。

  避難所や食料配給所を訪ねるという彼女と別れて、わたしは海辺で下げてきたサンドイッチを食べた。海辺の町は見事に破壊されていて、異様な気配。交差点ごとに警官が立っている。

  浜からバスの停留所へ戻る途中、屋台に人が集まっていた。これが食料配給所かと思っていたら、わたしにもパイを持たせようとする。必死に断るわたしに「いいのよ。サンクスギビングだから!持って行きなさい!」肉も野菜もと詰めてくれた。結局は、三段重の立派な包みになり、最後の重には、アップルパイとパンプキンパイまで入った。

  そして偶然、バス停で彼女と再会する。手を取り合うように喜び合って、離れていた数時間のことを報告し合った。帰路また、バスを降り電車に乗り、またバスに乗って地下鉄の駅に着くまで、わたしたちは話し続けた。そして、じゃあ、さよなら、って言おうとしたその時、わたしは大変な信じ難いことに気付く。

  お土産の包みは持っているが、リュックがない!

  パスポートから財布から全てが入っているリュックを、わたしは持ってない!(盛岡市、書家・沢村澄子)


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