盛岡タイムス Web News 2013年  3月 13日 (水)

       

■  〈日々つれづれ〉162 三浦勲夫 百年前と後

 北朝鮮の新聞が「ソウルのみならずワシントンをも火の海にする」とか「墓場にする」とか書いている。米韓合同軍事演習に対する反発として、敵意をこめた恫喝(どうかつ)だろう。海を隔てた日本では分かりにくい朝鮮半島の南北対立の根深さもある。核を手にした北朝鮮は「朝鮮戦争休戦協定」も破棄した。その後、国連安保理事会では北朝鮮に対するきわめて強い形の制裁案が採決された。今回は中国も強硬制裁に賛成し、成り行きが注目される。

  国同士の大規模な戦争といえば、20世紀の両次大戦を思い出す。今から百年前の1913年は第一次世界大戦が勃発する前年である。植民地の分割をめぐり、欧米の先発国(英米仏など)と後発国(ドイツ)が武力で争った。敗戦したドイツは再度覇権を求めて、イタリアや日本とともに英米仏ソなどの連合軍と戦った。壊滅的な破壊を各地に被ったヨーロッパ諸国は大戦の反省の上に立ち、戦後の平和維持に努力している。特に長年の宿敵だった独仏が平和的友好関係の維持に努めている。

  日本は第二次大戦では太平洋戦争を戦った。2個の原子爆弾投下を被って無条件降伏をして終わった。戦後は明日の明るい姿も見えないままに、なんとか忍耐し働き産業を復活し、経済力を中心に国力を高めた。民主的平和国家の建設を成し遂げて国際的な理解も得たといえる。戦後も68年がたち、戦後世代がほぼ8割で、敗戦体験の風化が問題になる。

  復興を果たし、日本が経済成長の坂を上っていたころから、日本は「日の出(ライジング・サン)の国」とか、「(次世紀は)ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」ともてはやされたりした。一方、それ以前から人種差別的な「黄禍論」もあり、白人社会へのアジア人進出が警戒された。図らずも今、東アジアでの覇権を狙う中国や北朝鮮が地域の不安定要因を構成し、世界の耳目を集めている。百年前の欧米の覇権争いとは違う形だが、国家主権とか、領土的主張とかをめぐる確執という点では共通するものがあるようだ。

  変わった点の一つは日本の立場である。日本は敗戦後、軍国主義を排し、復興、公害、バブル経済、長い不況と、戦後ほぼ70年の光と影の中を歩んできた。武力では独立立国も果たせないし、国際舞台での協調も維持できないことを学んだ。これからの10年、20年、さらにその先での日本の国政の舵(かじ)取りに貴重な経験だった。

  近習平中国共産党中央委員会総書記と軍部の力関係、金正恩朝鮮労働党第一書記と軍部の力関係は、軍部が実権を掌握する可能性もあろう。現在、北朝鮮政府の核武装強硬姿勢に中国政府も警戒を強め、友誼関係も揺らいでいる。東アジアの予断を許さぬ情勢の中で、約70年前の終戦や、百年前の第一次大戦前夜を直接、間接に聞き知る日本国民は昔と今の国際情勢の類似点や相違点を歴史的に思い返す。

  民主党政権から変わった自民党、公明党などの新国政も注目される。大方の世論は安倍政権の「三本の矢」に好感を寄せている。大胆な金融緩和や物価2%増安定策などの政策のもと、20年余り続くデフレから脱却すると同時に、国際面でも日本の行く手が問題となる。人生八十年、その上に先人がたどった20世紀を入れて百年以上の過去に光を当て、今後21世紀の将来を賢明に築かなければならない時点にある。
   (岩手大学名誉教授)


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