盛岡タイムス Web News 2013年  3月 14日 (木)

       

■  〈夜空に夢見る星めぐり〉326 八木淳一郎 ILCの都市目指して

 岩手県の公立高校の入学試験問題が新聞で報じられていましたが、天文・地学に関する問題からは、星や太陽など天体の姿や、位置、運行などを自分自身の目で見ることの大切さが分かります。本や画像などで得られる知識一辺倒では自然を理解したことにはならず、改めて試験問題を作成された方に敬意を表します。自然科学を学ぶ上で、最近の当地方のILC誘致問題は、いいきっかけかもしれません。

  ILCとは、International Linear Collider のことで、直線的に超高速で陽電子や電子を衝突させる世界的にも最先端で大規模な実験設備であり、これによって宇宙誕生の謎を解明しようというものです。

  1兆円近い経費がつぎ込まれるこの設備の誘致には国内から他にも名乗りを上げており、西暦2015年の着工に向けてしのぎを削っています。

  構想では、超巨大な実験施設が北上山地の地下深く南北に長いトンネル状に造られます。盛岡だけではなく、花巻、北上、奥州、一関の諸都市が関わる大掛かりなものです。奥州・水沢は歴史的な緯度観測所に続いて、現在は国立天文台があり、国際的にも科学のまちとして名高く、それだけに地域住民への啓蒙(けいもう)活動も盛んです。

  盛岡は、岩手県の県庁所在地として、行政の中枢を担っていますが、自然科学の分野ではどうでしょうか。大学や研究機関が周辺町村に移転しつつあり、競馬場や中心部に増えつつある巨大遊戯場や大型ショッピングセンターなどと相まって、よその人には消費と娯楽と官庁のまちのイメージが強いようです。アカデミックなイメージとかけ離れた印象を持たれますと、都市力とか都市の風格というものが他の中枢都市と比べても沈んでいく心配があります。

  ILC誘致に真剣になって名乗りを上げるに当たっては、経済効果ばかりを頭に描くのではなく、同時に、いえむしろ前提条件として、科学への関心の深さを内外にアピールする手立てを具体的に考えていくべきと思われます。奥州・水沢などの都市とも堂々と手を携えて、頼りがいのある県都としての誇りを築き上げていきたいものです。
(盛岡天文同好会会員)


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